テーマ: そっと
クラスメイトに綺麗な子がいる。
顔が綺麗なのは当然で、
長い髪をきちんと切りそろえていて、
背中もピンと伸びていて、
先生にバレない程度にメイクしてる。
土台が違うから自分が何しても無駄だと思っていたが、
ある日を境に彼女の友達もなんだか
うっすら綺麗になっていた。
え?何??
その子は失礼だが元々綺麗なわけじゃない。
眉太いし、足も太いし、日焼けしてるし、
目も一重で癖毛だ。
密かに同類という勝手な仲間意識を向けていたけど、
最近”この子こんなに可愛かったっけ??”
と感じる回数が増えた。
前の顔をよく見ていたわけじゃないから、
何が変わったのかよくわからない。
恋をしたとか?ホルモンの関係??
一人で悩むより聞く方が早い。
数日悩んで、コンビニで少し高いチョコレートを買い、
一人の時を狙って聞いてみた。
「唐突でごめんなんやけど、
原木さん最近急に綺麗になってない?なんか変えた?」
ただとは言わん!これ情報料!!
特別な時にしか食べない可愛い箱のチョコレートを
押し付けて、言ってしまってから後悔した。
自分、ただの変な人や。
我に返りここから何を修正したら誤魔化せるか
必死で頭を回していると、
のんびりとした声が返ってきた。
「え、気づいてくれたん?嬉しい」
顔を上げると、花が咲いたように笑う
クラスメイトがいた。
曰く。
いつも一緒にいる子がすごい可愛い。
元が良いから可愛いのだと思っていたら
薄くメイクしてることに気が付いた。
自分もメイクしたら可愛なれるかと思い
こっそり試してみたがうまくいかなかった。
友達に聞くのも恥ずかしいから
ネットで動画検索してスキンケアの大切さを知った。
「うちなあ、今まで顔洗ったらおしまいで、
スキンケアとかよう知らんかったし、
顔剃りもしとらんかったし、眉も眉間剃るだけで、
髪の毛も高温でばーっと乾かしとったんよ
あやねちゃんが可愛いのは普段からきちんとしとるからやったんやなー、あやねちゃんすごいなーおもて」
友達がすごいから見習いたくなった。
全部は無理だからとりあえずスキンケアと
眉毛頑張ってる。
でも誰も何も言わないから、自己満足だと思ってた。
自分が頑張っても無駄なんじゃないかと少し悩んでた。
言ってくれてありがと!
これ美味しいチョコやよね?半分こしよ?
そうやってにっこり笑う彼女は
上部ではない心の綺麗さで輝いていた。
同類とか思っててごめんなさい。
心の中で詫びた。
心の美しさはかなわなくても
容姿の点では似たようなものだ。
彼女の話はとても役に立った。
学校の帰りに薬局でカミソリを買い、
眉カットで動画検索をした。
化粧水や乳液は肌によって使うものを変えた方が
良いらしいのでとりあえず保留にした。
自分も今まで似たような感じだった。
ブスは何してもブスだと思って放置してた。
でも同類と思っていた子は変に捻くれず
素直に綺麗になる努力をはじめて成果が出てる。
ならば自分も努力スレばうっすら綺麗くらいには
なれるはず!
顔を洗い、母のオールインワンクリームを
少し借りて顔に塗る。
ヌルヌルしてて少し変な感じだ。
動画をいくつか見た後で鏡を覗く。
毛穴が目立つ、ニキビが汚い。
鼻の下の産毛が濃い。
あまり直視したくない顔に向かい合い、
先ほど見た動画の内容を思い出しながら、
眉毛にあたりをつける。
慎重に、少しだけ。
ぬるり。そしてぞり。
クリームの影響で手が滑り、
嫌な感覚が刃先から伝わってきた。
そっとしておいて欲しい。
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