ある少女の死

排水溝に水が流れるような音を立て、少女が血を吐こうとゴポゴポ頑張っている。

自分の吐いた血で溺れている。刃渡40センチほどの刃物が腸と胃を貫いている。柄が墓標のようにゆらゆら、少女の脈拍と呼吸に合わせ揺れる。刺した犯人はとうに走り去りこの閑散とした深夜の海浜公園には人っ子一人いない。血潮が滅多刺しにされた腹の傷口から溢れてくる。こんなに刺されて痛々しい傷でも直接命に届いておらず少女は呻き、血の冷えていく死への歩みを緩やかに進めている。立ち上がることもスマホも充電切れで助けを呼ぶことも出来ず、一人家出をしたことを後悔している。自分の傷口から流れる血液の音と波の音だけ耳に入ってくる。月すらもこの惨状を見ておらず、倒れ込む時に潰れたリュックのカップラーメンが食べられず、捨てられる事も知らずに蓋を開けている。

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