一過性の恋

別に好きな人に好かれないからと死ぬわけでは無い。

彼女が死んでしまったからと言って僕の中から好きが消えるわけでは無い。

僕だけが死んでしまえば彼女は一生僕に気づかずに幸せになる。

僕だけが死んでしまえば彼女は僕の気持ちを引きずらずに済む。

僕が彼女に何も伝えなければの事だけど。

別に覚えて欲しいわけでは無いけど僕の事を思い出のほんの片隅にでも置いていて欲しい。

僕は一生老いていく君から目を背けてあの頃の若々しい、ニキビがあり、輪郭があやふやな顔を持つ君を愛していく。

大人になった君を見ても君と気づかないほどに。

あの恋心を同じ年齢の移り行く少女たちに一瞬、抱く。

横目に映る彼女たちが僕の未練がましい網に引っかかって僕だけ短く遠吠えをうまくできない野犬のように呻く。

僕だけ大人になれないで、止まってしまった心の時計を引きずり歩く。

誰か引っ張り上げてくれる人を求めている。

けれど、君じゃない嫌悪感できっと突き放してしまう。

どんなに一過性の恋をしても頭の片隅から君が顔をだして、僕の事をきっとなんとも思っていない君が顔をだして僕に後悔ばかり教える。

僕に恋心を教えたように優しく。甘美に、何も僕にはくれないで安全なところから檻の中の熊を見るみたくいつも君はそうやって僕の心を弄ぶ。

きっと気づいているはずなのに、僕と同じ学校に通う僕よりずっとイケてる奴の詳細なんか訊きやがる。

僕が君の事を何でもない風にして何もしないのは迷惑だろう、という自己肯定感の低さの為せる技。

僕は誰よりも君の事が好きなのに。

僕は誰よりも君の事が好きだったのに。

僕はもうその時の残り火の燻りだけを覚えている。

君の顔の表情もとっくに忘れて。

君の声の高さもとっくに忘れて。

もう諦めがついてしまった。

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