第6話シナリオ
魔物を退け、金糸雀に向かった咲枝たちを出迎えたのは、沐漣の姉の紅だった。自身を金糸雀の皇女と説明する紅に驚く咲枝。紅が皇女ということは、沐漣は皇子ということだ。
皇帝に帰艦報告に行くという沐漣と別れ、咲枝は紅と行動を共にする。だが紅に艦内を案内されていると、兵士が紅を呼びに来る。皇帝が呼んでいると言うので、紅は仕方なく、使用していない部屋で待つよう咲枝に告げる。
一方、謁見の間では沐漣が、現皇帝・詠花と対峙していた。彼女は、聖気の結晶石が規定の量採取できていないことを指摘してきた。沐漣はこの時点では、咲枝が結晶石を吸い取ってしまった事実を話していなかった。咲枝の連行を優先し、目標数に足りない結晶石の補充を保留したまま帰艦したのは、沐漣の判断。だがいくら本当のことを話したところで、目標に届かないままのこのこ帰ってきたことを詰られるのに変わりは無い。
しかし詠花は、既に咲枝の存在を知っていた。皇子である沐漣の下につく者に、真の意味での彼の味方はいないと言っても良い。全てが詠花の息のかかった者たちだ。中でも、沐漣の行動を監視し、逐一詠花に報告する義務を負う者が時々潜り込ませてあることを、彼は知っていた。
「この私に何か隠そうったって無駄だよ。勝手にあんな【黒い娘】を艦内に入れて……内から国を崩そうって腹積もりかい?」
咲枝の容姿からそう揶揄する詠花の言うことを沐漣が否定しようとしても、彼女は聞く耳を持たない。更に何かを言い募ろうとした詠花へ、横から兵士が何やら神妙な面持ちで耳打ちする。それを聞くと、詠花の渋めの顔は更に訝しげに歪められた。そして突然沐漣に、今日はもう下がるよう告げる。急遽打ち切られた謁見にいくらかの不審感を抱いたものの、彼はそのまま玉座の間を後にした。
沐漣が辞して数瞬、今度は彼の船に同乗させていた侍女から、詠花のもとに密告が入る。結晶石を吸い込むこと。魔物を操ること。本来人が宿しているはずの聖気も感じられないこと、等々。
「聖気を持たずに自我を有し、聖を吸い取り魔を引き寄せる……ふん、まるで災殃因果律だね」
暫く考え事をした後、詠花は兵士の一人を呼び出し、咲枝の処遇についてこう告げた。
「その娘は結晶を喰い尽くす悪魔だよ。すぐにひっ捕らえておいで。ただし首は飛ばすんじゃない。良い使い道を思いついたからね」
かくして、咲枝の知らないところで、彼女の運命は動き出していた。
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