エピローグ

あれから一年が経った。


街は相変わらず賑やかで、学校にも新しい顔が増えた。でも、私は毎朝、あの坂道を歩くたびに思い出す。転校してきた日の怜人君の姿を。初めて私の名前を呼んでくれた声を。


時々、胸がぎゅっと締めつけられる。でも、今の私は、もう逃げない。悲しみに蓋をして生きるんじゃなくて、怜人君が残してくれたものと一緒に歩くって決めたから。


生徒会室の窓から見える夕焼けが綺麗だった。あの日と同じ、少し滲んだ橙色。私はカバンの中から一冊のノートを取り出す。怜人君と交わした最後の約束、そして彼と綴った思い出の言葉が詰まったノート。今は私がそこに、自分の気持ちを記している。


「ねえ、怜人君。今日ね、また一つ夢が叶ったんだよ」


誰もいない空間に語りかけながら、私はそっと微笑む。独り言じゃない。怜人君は、ずっと私の中にいる。心の一番奥に、静かに、でも確かに。


季節は巡っても、あなたと過ごしたあの日々は、決して色褪せない。辛いことがあっても、私はあなたの分まで、前を向いて生きていくよ。


「……だからさ、見ててね」


私は立ち上がり、窓の外に広がる空を見上げた。どこかにいるあなたに届くように。


あなたが大好きだった、あの空の向こうに、いつか私も辿り着けるその日まで――。

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僕が君に近づく訳〜揺れる世界で君がくれた言葉〜 ks1333 @ks1333

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