第16話 王都魔術師団ドロシー2
ドロシーは結界魔術を屋敷の周りに描いて満足そうに帰っていった。
その夜、遠くから魔獣の鳴き声がした。最近マシになったとはいえまだまだ屋敷には昼夜関係なく魔獣が襲ってくる。
今夜も魔獣が来たのかとため息をしながら窓から外を見る。すると屋敷の前の小道からぞろぞろと魔獣が迫ってきていた。
ドロシーの結界は効果を発揮しなかったのだろうか。後でクレームを入れなきゃな。
俺とイリスは武器を持ち魔獣を撃退するために玄関で身を潜めた。しかしそれは杞憂に終わった。
パァン!ピギィ!
耳を澄ませて魔獣の気配を聞き取っていたら突然鈍い破裂音と悲鳴が複数聞こえた。
恐る恐る外に出てみると屋敷の前の小道で魔獣が破裂して四散していた。
そして地面を見ると結界が怪しく光っている。どうやらドロシーの結界は発動したようだ。
屋敷の周りには無残にも破裂した魔獣の内臓や肉片が細切れにぶちまけられていた。
「これは・・・すごいな」
「うわぁ。私、当分お肉は食べられないかも知れません」
俺とイリスは苦々しく顔を見合わせた。
後でドロシーに結界のことを問い詰めると「今まで試したことの無い特注の魔術だ。うまく破裂して良かった」と喜んでいた。
魔獣が破裂した生々しい現場を見てしまい、こちらはちっとも嬉しくはない。屋敷の周りを魔術の実験場にするのはやめて欲しい。
それからときどきドロシーは結界のメンテナンスのために屋敷を訪れた。
何回か屋敷に来るのでイリスはついでに食事に誘った。そこから一緒に食事をするのが恒例になっている。
イリスはドロシーと仲良くなると屋敷内を掃除する魔術や屋敷の周りを綺麗にする魔術をかけてもらっていた。
「君のところのメイドは大物だね。この僕を屋敷を綺麗にするためにこき使うなんて」
そんな事を言ったが魔物を破裂させたのはドロシーなので自業自得だろう。
あるときドロシーの前で前世の家電の話をしたことがあった。
前世では家電が色々あって生活が楽だったという話だ。ドロシーはその話を興味深そうに聞いていた。
考えてみれば前世は便利だった。炊飯器や電子レンジ、冷蔵庫。この世界にはない便利な家電が沢山あった。
「そんな便利なものがあるのなら僕も作りたい」
そう言うと難しい魔術書を屋敷に持ち込み、魔術師団の仲間を呼び込んで家電を作れるか実験をし始めた。
ドロシーは魔術師団のメンバーから尊敬されているようで皆実験に協力的だった。
そしてメンバーたちも熱心に家電づくりをしていた。もしかして魔術師団というのは意外と暇なのかもしれない。
加えてなぜか最近、騎士団の若い連中も屋敷に来る。目当ては【業務用スーパー】で作る飯だ。
屋敷のゲストとなるので一応はもてなすが、こちらにメリットはあまりない。あるとすれば最近の王都や国の内部状況が分かるぐらいだ。
さすがに無料で飯を食わせると懐が寒くなり困るので金をとることにした。
それでもなぜか訪問者は途絶えなかった。そのうち魔術師団も騎士団も飯を食うためだけに屋敷に来るようになった。ウチは定食屋じゃないんだが。
2つの組織はそりが合わないのか常にいがみ合っていた。だが俺の飯を食うときと国の上層部の悪口を言うときだけは団結していた。
騎士団や魔術師団のメンバーは国王や宰相に対しての不満を抱えた者が多かった。ここでもセデリア国王はあまり尊敬されてないようだ。
今は宰相のバルタスという人物が国の政治を動かしているらしいがその人物の評判が特に悪い。
宰相は国王に色々と助言しているのだがそれがあまりにも国の事を考えていないという。
今まで自分の生活の事だけで頭がいっぱいだったので国や王都がどういう状況なのか分からなかった。でもなんだか複雑な事情があるようだ。
その頃ドロシーはついにある家電の開発に成功した。しかし、それが原因で俺たちは再び王女に目をつけられることになる。
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