第10話 王都騎士団クラリス2

 屋敷の護衛を募集したらなぜかSランクの騎士団副団長クラリスが来た。


 クラリスに異世界の食事を食べたいとせがまれたので料理を作ることになった。


「それにしても勇者候補の一人が本当にこの屋敷に住み続けているとは知らなかった。魔獣の森の近くに住んでいて何も思わなかったのか?」


 俺がキッチンで食事の準備しているとクラリスはそんな疑問を口にした。


 「最初はここがどんな場所か分からなかったんだ。だが今の俺は平穏な生活を誰よりも求めている。魔獣を追い払ってその手伝いをしてくれると助かる」


 「お、おう。できるだけ手伝おう。騎士に二言はないぞ」


 クラリスが屋敷を護衛してくれる代わりにこちらは【業務用スーパー】のスキルで食事を提供する。これが契約だ。

 屋台で俺の料理を食べて感動したクラリスはここでも同じような異世界の食事を食べられると思って楽しみにしている。


 そういえば王都の屋台ではフライドポテトやフライドチキンが無かったな。

 普通、屋台といえば揚げ物のイメージだった俺はあの時少し拍子抜けした。

 俺はフライドチキンやポテトを食べたくなってついでにクラリスに食べさせることにした。


 【業務用スーパー】でさっそくチキンとポテトを取り寄せる。注文を終えると冷凍されたチキンとポテトが空中から落ちてくる。


「おいダイスケ、今何をした?」


 あ、まずい。そういえばこいつは俺のスキルを見たことないのか。


「あークラリスさん、私とお話ししましょうね!王都騎士団ってやっぱり忙しいんですか?私、興味あるなぁ」


 イリスが俺のスキルを見られてまずいと思ったのかフォローに入るが、クラリスの眼は誤魔化せなかったようだ。


「いや、そんなことよりあいつの近くからいきなり何か出てきたぞ!」


 バレたら仕方ないな。俺は仕方なく【業務用スーパー】の説明をした。


「このスキルのおかげで異世界の料理が食えるんだ」


「そういうことか。何かの手品かと思ってびっくりしたぞ・・・」


 気を取り直して料理に戻る。


 鍋を用意して多めに油を入れ温度が高くなったのを確認するとそこに冷凍されているポテトとチキンを流し込んだ。

 パチパチという音が軽快に響いてくるので、あとは衣がカリッとなるまで数分揚げれば完成だ。


 あとはソースも重要だな。

 シンプルに塩で食べるのもいいが途中で味を変えたい。【業務用スーパー】で適当にケチャップ、マスタード、バーベキューソースを選んだ。


「これほど油を豪快に使う料理は見たことがないな」


 出来上がったチキンとポテトを見たクラリスはそう感想を漏らした。


 どうやらこの国は油も高いらしい。スキルで取り寄せれば安いから気づかなかったが確かに屋台では油で揚げる料理も少なかったな。

 

「ダイスケ様のスキルではこれが普通なんですよ」


 イリスが自慢げに胸を張る。


「これは、すごい美味いな!こんなに大きな肉の塊食べたことがないぞ!」


 イリスの言葉も聞かずにクラリスは我慢できずに素手でフライドチキンにかぶりついていた。


「クラリスさんお行儀悪いですよ、って本当だ!この熱々のお肉美味しいですね」

 

 目の前ではイリスとクラリスが美味そうな顔をしてポテトとチキンを食べている。 

 美味い飯を食べてみんなが嬉しそうにしてるのはいいものだな。


 いや、待て。

 最近俺は飯を食わせるのに満足してスキルを隠すことを疎かにしているんじゃないか。さっきだってクラリスに言われるまで何がおかしいか気づけなかったじゃないか。


 料理を振舞うのは良いのだがこれ以上噂になっても困るな。そこで俺は念押しした。


「ここで出した料理は他言無用で頼む。この世界ではありえない方法や食材を使って調理するかもしれないが絶対誰にも言わないでくれ。これはこの屋敷にいる人間だけの秘密だ」


 あの屋台での目立ち方は平穏な生活を目指すには明らかにマイナスだった。

 目指すべきスローライフは誰にも邪魔されずに淡々と美味い飯を食べることだ。

 自分のスキルを見せびらかして目立つのは良くない。 


「承知した。こんなに美味い料理を食べられるならどんな約束も守ろう」

 

 その後三人で雑談をしていると話題は俺が屋台で焼き鳥を売っていたときの話になった。


「あの時のダイスケはすごかったぞ。ダイスケの屋台だけ行列が出来ていてな」

 

 クラリスがその時の状況を楽しそうに説明する。焼き鳥の美味しさが衝撃的だったのだろう。


「実はあの後、王女が焼き鳥を買いに来て騒ぎになったんだ。王女も美味しそうに食べてたけどな」


 俺が付け加えるとイリスは心配そうな顔をした。

 イリスもこのスキルが多くの人にバレるのが嫌なのだ。

 でももう大丈夫。これからはそんな目立つ行動はしないと決めてるぞ。


「殿下がダイスケの屋台に来たのか。私も挨拶をすれば良かったな」


 クラリスの言葉にイリスが続く。


「アナスタシア殿下は新しいものが好きなのでダイスケ様の屋台に来られたんでしょうね。でも最近、慣習を重んじる国王陛下と新しい物好きの王女殿下はあまり仲がよろしくないという噂ですが」


 勇者召喚の時に無能呼ばわりしてたあの国王と焼き鳥の詳細を詳しく聞きたがっていた王女が親子なのは面白いな。


 王女の話になるとクラリスとイリスからは好意的な話が次から次へと話題に上った。どうやら国王と比べても王女の好感度は高いようだ。

 それにしても一緒に屋台を出していた連中も国王の悪口を言っていたし、王女のほうが国民に慕われているんだろうな。


 「そこまで慕われているんだったらアナスタシア王女が次の国王になればいいんじゃないか?」


 軽い気持ちでそんなことを口に出すと場は静まり返った。その言葉に二人とも微妙な顔をしている。


 「そのように思っている民は確かに多い。しかしそう上手くいかない理由がある」


 クラリスはそう切り出すとセデリア国の複雑な事情について教えてくれた。

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