第19話 ドロシー視点2
僕は日々の魔術師団の仕事で退屈をしていた。だがついにその退屈を吹き飛ばしてくれる人物が現れたのだ。
ある日、異世界人が屋台で珍しい食べ物を売っていると聞いた。気分転換したかった僕はその話を聞いていつか機会があったら行ってみようと楽しみにしていた。
数日後、大通りに行ってみたがその異世界人の屋台はどこにもなかった。近くの屋台で聞いてみるとどうやら2日だけ商売をして行方を消したらしい。
ついてないな。そんなに珍しい食べ物なら僕が味見してやろうと思ったのに。
友人のクラリスに会ってその話をすると、なんとその屋台で異世界料理を食べたと言う。
「その男は焼き鳥という食べ物を売っていてな、程よく柔らかい肉にスパイシーなソースが絡まって絶品だったんだ」
普段食べ物には無頓着なクラリスがこんなに絶賛するとは珍しい。
「僕も食べたかったな」と呟くとクラリスはその人物を探してみようと言い始めた。そして後日クラリスはその男を探し当てた。
「ドロシー、あの焼き鳥男の住処を見つけたぞ!」
そう言ってクラリスが見せたのは掲示板に張られていたという一枚の紙だった。名前はカガ・ダイスケ。どうやらその男は護衛を探しているらしい。
「しかしこいつは何を考えているか分からない異世界人だ。私が最初に護衛の依頼を受けて見に行こうと思う」
「分かった。僕は報告を待ってるよ」
その案に賛成しクラリスはダイスケの屋敷に行った。
後日クラリスが護衛の依頼をうまくこなして屋敷に潜入し、食事までご馳走になったと聞いた。
クラリスによるとダイスケは想像以上におかしい人物のようだ。いきなり目の前から食べ物を出したり魔獣を手懐けて一緒に住んでいたり。
しかもなんだか最近クラリスの肌の艶がいい。聞けば野菜からエイヨーを摂取しているという。
僕はその話に理解が追い付かなかった。
食べ物を出す?魔獣と暮らしている?エイヨー?
でも面白そうな奴じゃないか。僕のつまらない日常を変えてくれそうな気がする。できればどんな奴なのか直接見に行きたい。
ダイスケはちょうどよく魔術師を欲しがっているらしく、今度は僕がその屋敷を訪ねることになった。
離れの屋敷を訪ねると周りにはブラッドウルフやゴブリンがのんびりと暮らしていた。僕は一瞬警戒したがその魔獣たちは敵意が無く大人しかった。これはどういう状況なのだろう。
屋敷では食事をご馳走になった。食卓に並んだのは異世界の料理で肉を油で揚げた料理や甘くてふわふわのお菓子などだ。
「な、なんだこの料理は!?美味しすぎる」
僕もそんなに食事に興味があるタイプではないのだが、そこで出された食事は衝撃だった。
それは今までの食事の中で一番美味しかった。今までの料理って何だったんだろうと思うくらいだ。
僕はダイスケの料理に深く感動したがそれ以上に好奇心と不信感が芽生えてきた。確かにダイスケが用意する料理は美味い。しかしちょっと待ってほしい。
この男はどこから食材や料理を用意したんだ?このような料理はこの国のどこにも存在しない。いや世界中を見渡しても珍しいだろう。そんな料理をどうやって用意した?
そもそもこの国は慢性的な食糧不足だ。貴族でもない限りこんなに沢山の料理は食べることはできないし異国の地の料理なんて貴族はおろか王族ですらめったに口にできないはずだ。
疑問をダイスケに尋ねると予想外の一言が返ってきた。
「この世から魔獣が一匹残らず消えたら教えてやる」
僕はその言葉に首を傾げた。この男は何を考えているんだろう。もしかして今も勇者として魔人王を打倒することを目指しているのだろうか?
後でクラリスに聞くと同様に驚いていた。
「本当にそんなことをダイスケは言っていたのか?何か企んでいる奴とは思っていたが・・・」
「企んでるって一体どういうこと?」
「信念というか、芯があるというか。ともかくあの男には何か別の思惑があるように思えるんだ」
クラリスの説明はいまいち要領を得ない。
ただダイスケのスキルについて詳しく聞くと異世界の食料を取り寄せるという能力であることは分かった。
もしや僕にそのスキルを隠したのは何か裏にあるのか。それを利用して秘密裏に計画しているのか。
考えることは色々とあったが食事もご馳走になったし、礼と言ってはなんだが結界魔術を屋敷の庭に設置してやった。
効果はその範囲内に入った魔獣の内臓が破裂して即死するという至ってシンプルなものだ。
これが気に入ってもらえればまた屋敷に食事を食べに来てもいいだろうか。そんな事を考えながら出来るだけ強力な結界にした。
あとで感想を聞いたらダイスケは「いきなり魔獣が破裂した」と初めて魔術結界をみたのか興奮した様子だった。どうやらちゃんと発動したみたいだし頑張った甲斐があるというものだ。
最近は魔術師団で仕事しているよりあいつの話を聞いているほうが面白い。
ダイスケの前世での生活はこの世界よりも進歩していて生活が魔道具みたいなもので溢れているらしい。ちなみに生活に使っていた魔道具は家電という。
ダイスケは料理が好きなようでこの世界にも家電があればもっと料理ができて便利なのにとよく口にしていた。
そうだ、こいつのためにもこの世界で家電を再現してみようじゃないか。何かもっと面白いことが起きそうな予感がする。
そう考えると魔術師団の仲間を呼んで家電の再現をした。この魔導具開発は魔術師団の単調な作業より何倍も楽しかった。
一方ダイスケは変な行動も多い。その代表的なのがスキルを使って魔獣に食事を食べさせていることだ。どんな博愛主義者だよと思っていたが、ダイスケ曰く痩せこけた魔獣を可哀想だと思って食事を食べさせているらしい。
そのうち屋敷の周りに浄化された元魔獣がもっと大勢棲み始めた。僕は異種族が怖くて怯えていたが、ダイスケとメイドのイリスは慣れてしまったみたいだ。どれだけ肝が据わっているんだこいつらは。
いや、これもクラリスが言うように何か思惑があってのことなのか?
ダイスケは国王陛下のことが嫌いみたいだし王家や王国を相手取って一泡吹かせるために何かしようとしてるのかもしれない。その時は冗談交じりでそう思っていたのだが実際はそれ以上の事が起きた。
後日ダイスケと僕たちは王家に一泡吹かせるどころか国ごと乗っ取ることになったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。