第47話 魔人王とおっさん
俺たちは魔術師団と残った騎士団と共に、敗走するゲイブランド軍の残党を追い、森の奥へ進んだ。
すると、森の陰から着飾った初老の魔人とその臣下たちが現れた。その中には消えたはずのザヴィの姿もある。
「セデリア軍の諸君。私がカルヴァン・ゲイブランドだ。魔人王と名乗った方が分かりやすいかな」
魔力が満ちるその威容に、空気が一瞬で張り詰めた。
カルヴァンの額には大きな角が生え、そこから魔力が溢れている。重々しい口調で言葉を紡ぐ魔人王だったが、俺を見つけた途端なぜか哀しそうな表情を浮かべた。
なぜ、ここに魔人王が? そう思った瞬間、異変が起きた。
「……え?」
周囲のセデリア兵たちは、馬上で意識を失い、そのまま鞍から崩れ落ちていく。呻き声と装備のぶつかる音が響き渡った。
カルヴァンの隣に控えるザヴィが、こちらを見て薄く微笑んでいる。まさか、あいつの仕業か?
馬を寄せて、ドロシーに尋ねた。
「ドロシー、これはどうなってるんだ」
「もしかしてあのザヴィっていう魔人、魔術師じゃなくて呪術使いだったのかもしれない。あのときの光は魔術じゃなくて体を蝕む呪術だったのかも……」
その声は次第に弱々しくなっていく。やがて「失敗した」とつぶやくと、ドロシーは糸が切れたように鞍の上から崩れ落ちた。
俺は慌てて馬を降り、地面に倒れた彼女を抱き起こす。ドロシーは顔をしかめ、苦しげに呻いていた。これが呪術の効果なのか。
呪術は後から効く呪いのようなものだと以前聞いたことがある。あのときのザヴィの光が呪術だとすると、誰も防御する暇がなくまともに浴びたはずだ。
そのとき、はっとした。なぜザヴィは単身でセデリア軍大勢の目の前に姿を現したのか。それは、セデリア軍全員に呪術をかけることが目的だったんじゃないか?
「カルヴァン閣下!セデリア軍の騎士団長を捕らえましたぞ!」
声のした方を見ると、魔人の幹部らしき人物に連れられたクラリスの姿があった。
その姿は、いつものクラリスとはまるで別人だった。灰色の肌に虚ろな目。まるで魂を抜かれたようにクラリスは連れられていた。クラリスが、魔人化している?でもなぜあんなに強いクラリスが?
疑問は尽きなかったが、現実はセデリアの敗北を色濃く示していた。特にドロシーとクラリス。二人が戦闘不能になれば、もうこちらに勝ち目はない。
ゲイブランド軍は、最初からこの二人を抑えれば勝てると見て、戦略を組んでいたようだった。その戦略に気づかず、ドロシーとクラリスの存在に頼りすぎたセデリア軍は、戦略を軽んじた末にこの結果を招いてしまった。
クラリスは魔人となり、ドロシーも戦闘不能。残るはベルトランだが、あいつは村の指揮に回っているはず。しかも、兵の大半はこちらの部隊に投入している。逆転はもはや不可能だ。
俺がドロシーを支えながら焦りを覚えていると、そこへ1人の魔人の騎士が近づいてきた。
「ごきげんよう。私はログナー、誇り高き魔人の騎士。あなたが奇怪な能力を持っているというダイスケですか?」
俺は力なく頷くと、ログナーは静かに剣を抜いた。
「その能力は、我らが統べるこれからの世界には少々目障りでしてね。消えてもらいましょう」
ログナーは剣を構えると俺を目掛けて振りかぶる。その迷いのない一太刀に、俺は避ける術もなかった。
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