第40話 セドリック侯爵の要求
「セデリア王国は昔から税負担が重すぎるのですよ。特に輸入品に対する関税をもっと低くしていただきたい」
ここはモンクレール侯爵家の屋敷。目の前では、若くして当主になったセドリックが熱弁している。
出会ったときは努めて冷静だったセドリック・モンクレールだが、徴税の話になると人が変わったように熱くなった。どうやらこいつは前国王の時代から決められている関税の高さに不満があるみたいだ。
「悪いがそれは前国王の時から決められたことなんだ。ナーシャが悪いわけではない」
「では、アナスタシア王女に関税を見直すようおっしゃってください!このままでは私の領地もヴェルター領と同じ結末になるかもしれませんよ?」
ヴェルター領。それは、俺たちが国家転覆を成功させる以前に、なぜかゲイブランド側に寝返った北方の領地だ。
セドリックは、自分の領地もゲイブランドに寝返るかもしれないと、遠回しに脅しているんだろう。もし本気で言ってるのだとしたら、少々面倒だな。
ナーシャに教えてもらったが、この国では海外からの輸入品には関税を意図的に高く設定しているらしい。国内の生産物を消費したいのは分かるが、少し雑な税制に見える。
前国王も余計なことをしてくれたものだ。国内で農作物を生産できないのなら、関税を低くして輸入品に頼るべきなのに、前国王は中途半端な税率で流通量を減らしてしまっていた。
その結果、地方では食糧不足が起き、王都やポーティスのような裕福な地域にしか輸入品が行き渡らない。一方、ナーシャはこれから魔獣を一掃して国内での農作物の生産をさらに高めようとしている。
そのため、彼女は逆に輸入品への関税をさらに引き上げる可能性もある。なぜなら輸入品に頼らず、さらに国内の生産を高めることを目標とするからだ。そうなると輸入品で成り立っているポーティスは困るだろうな。
セドリックは俺が王婿だからナーシャに話を通しやすいと思って呼び出したのだろう。農作物の自給率をあげる話と関税はかち合う可能性が高い。セドリックには「ナーシャに関税の件を話してみるから、少し待ってほしい」と伝えた。
ただ、ここまで話を聞いていると、何か違和感があった。要求も態度も妙に強気だ。セドリック侯爵は王族に比べれば序列ははるかに下のはずなのに、どうしてこんなにも強気に出られるのか、腑に落ちなかった。
交易で儲かっているから思い上がっているのか、もしくは単純にナーシャや俺が舐められているのか。不審に思っていたが、その理由は分からなかった。
「ところでダイスケ殿下、あの噂は本当ですか?」
侯爵が言っているあの噂というのは俺の【業務用スーパー】スキルの話だった。
「ああ、それは本当なんだが…」
このスキルの存在は王都に住んでいる人間なら全員知っているし、それがセドリックの耳に入ってても不思議じゃない。。
「よろしければそのスキルで私に異世界料理を振る舞ってくれませんか?」
セドリックは異世界の料理に興味津々の様子でそんなことを言ってくる。だが、今まで外部の人間に【業務用スーパー】を見せて良い記憶は無い。
「そんなに人前で見せびらかすものでもないしなぁ」
「見せてくれないのですか…。じゃあこれならどうです?ザビィ、入ってきたまえ」
スキルを見せるのを渋っているとセドリックが合図をした。やがて俺たちがいる部屋に、何の前触れもなく一人の魔人が歩いて入ってきた。
それは三傑魔の一人、ザヴィだった。
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