第7話 王都で焼き鳥を売るおっさん
「今日は薬草が入ってるよ、安いよー」
「そこのおねえさん、このネックレスはいかが?」
王都の大通りは朝から盛況だった。
装飾品、生活用品、食べ物などの屋台が並び客と商売人で賑わっている。
なぜ王都に来たかというと【業務用スーパー】のGPを増やすのが目的だ。スキルと前世の自炊経験を組み合わせれば屋台で商売をして儲けることが出来ると思ったのだ。
深く帽子を被って、周囲を素早く観察する。首尾よく王都に入れたが、俺は国王に嫌われているのであまり正体を晒したくない。
イリスにもスキルは慎重に使いましょうと言われているしあまりにも目立つことをしたら王都から追い出されるかもしれない。
どれくらいの人間が俺の事を知っているか分からないが、気を付けて行動しよう。
聞いた情報によると屋台で商売をするには許可が必要で、屋台を用意するのにも金がかかるらしい。
仕方ないので暇そうな屋台に後払いで金を払うから屋台を貸してくれと片っ端から頼み込んだ。協力的な人物はすぐに見つかり屋台を貸してもらえるようになった。
「そもそも屋台は国王の許可が無いと出せないんだよ。その上あの国王は気に入らない奴には許可を出さないって話で有名さ。好きなだけこの屋台を使いな」
その屋台のおばさんは呆れたように教えてくれた。
どうやら屋台での商売をやめようと思っていたようで、これからもずっと使っていいと言ってくれた。ありがたく使わせてもらおう。
周りには屋台の商売人が大勢いたが、そもそも俺が国王から嫌われていることを知らないようだった。それどころか離れの屋敷に追放されたことすら知らない。
なんだ、誰も俺の事を知らないんだったら警戒する必要もないな。
その上大勢の人間が国王の事を嫌っているようで皆で国王の悪口を言い合っていた。
この国は上の人間が腐っていても下で付き従う人間はまともな奴が多いのかもしれない。どこの国でもありそうなことだ。
さて、問題は屋台で何を売るかだ。
【業務用スーパー】と料理経験を最大限利用するのであればもちろん食べ物一択だ。そして出来れば安くて手軽で美味しい食べ物。そんなものがあれば売れると思うんだけどな。
頭を悩ませたがその前に周りの屋台でどのような種類の食べ物が売られているのか調査した。結論から言うと周りの食べ物の屋台はシンプルなものが多かった。
具体的には焼きトウモロコシやジャガイモをすりつぶした料理、木の実やキノコなどを売っている屋台が多い。全体的な特徴としてあまり手の込んだ料理は無くシンプルな食べ物が多い。そして物価が高い。
これは逆に言えば俺にチャンスがあるということだ。手が込んでいて濃い目の味、かつ安くて美味い食べ物。
【業務用スーパー】のスキルを使ってそんな料理を作れば売れるかもしれない。
やがて屋台で売る物を考えついた。手軽に食べることが出来て安くて美味しいもの。そうだ、アレを屋台で売ってみるか。
◇
「なんだこの美味さはっ!」
「めちゃくちゃうまいぞ、この肉!」
「噛めば噛むほど旨味があふれてくるようだ!」
俺はある食べ物を屋台で売り始めた。
その食べ物はみるみるうちに売れ始め、客はみな驚きの表情をしている。屋台を始めてあっという間に行列ができてしまった。
「ここで不思議な食べ物が売ってるぞ!」
「珍しい肉が食えるらしい!」
買ってくれた客たちの反応でまた客が増え、それを見てまた客が集まる。屋台を始めてから常時50人くらいの行列が出来て大忙しになった。
俺が屋台で売った食べ物は焼き鳥だ。
【業務用スーパー】で網が付いたガスコンロとタレ付きの焼き鳥を取り寄せた。これで手軽に美味しい焼き鳥がすぐ出来上がる。
これは大成功だった。
焼き鳥を焼いているだけでタレのいい匂いが周りに漂って良い宣伝になる。タレの匂いと客の反応でまた客が増える。
俺は焼き鳥をひたすら焼いて提供し続けた。
夢中になって売り続けているといつの間にか取り寄せた分が全部売れてしまった。仕方ない、一旦屋台を閉じるか。
「もうあの肉は売ってくれないのか?」
「頼む、あれを食わせてくれ!」
客が群がって食わせろと押しかけてくるが、もう売り切れだと言うと皆渋々帰っていった。こいつらそんなに焼き鳥が気に入ったのか。
片づけを終えると金を数えてみる。焼き鳥をずっと売り続け2時間足らず。手元には銀貨40枚と銅貨が沢山ある。
となると通貨換算で40000GP以上。2時間経ってないのに4万円相当!?おいおい、これはうまい稼ぎ方を見つけたんじゃないか?
小銭袋には硬貨がぎっしり詰まっており重たい。
屋台のお隣さんもそれを見て「にいちゃんやるなぁ!」と快活に声をかけてくる。
もしかして俺には商売の才能もあるのかもしれない。こうなったら明日はもっと焼き鳥を売ってやろう。
そう考えてその日は宿屋に宿泊して、翌日また焼き鳥を売ることにした。
しかし翌日、王都のめちゃくちゃ偉い奴に目を付けられ大変なことになった。
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