第30話 目玉焼きウィンナー定食と勇者一行
俺は色々あって王女と国家転覆することになった。
屋敷では国家転覆計画の集会が連日行われる中、俺は現実逃避するために無心で畑をいじっていた。
畑は良いよなぁ。いきなり国家転覆しようとか言わないし。
そんな事を思いながら畑でゴブリンたちと畑作業をしていると遠くから冒険者風の三人組がやって来た。
一人の少年は重そうな盾と剣を担ぎ、もう一人の少年はメガネをかけて魔術使い風。もう一人の少女はシスターのような姿をしていた。
どこかで見たことがあると思ったら高校生勇者たちのパーティだ。初めてこの世界に来たとき一緒に召喚された高校生勇者たち。あの時から風貌が少しやつれているようで、気付くのが遅れた。
この世界に召喚されて以来一度も会ってなかったが、こいつらの印象は正直悪い。なぜならスキル鑑定した時、俺のことを笑っていたからだ。
高校生勇者たちはこちらを見ると駆け寄ってきた。しかしなぜこのタイミングで勇者たちが来たのだろう?まさか俺たちが国家転覆を企んでいるのを知られてしまったか?
「おっさん、俺のこと覚えてるか?」
俺が返事をしようとすると、勇者は先に屋敷の周りにゴブリンやブラッドウルフが大勢いることに気づいた。
「ちょっと待て、この魔獣たちは一体何なんだよ!」
「お前、何も知らないのか?」
どうやらこいつらは国家転覆の計画も、俺が魔獣を味方にしている経緯も何も知らないらしい。説明しながらとりあえず屋敷の中に勇者たちを入れた。
リーダーの勇者は翔太、魔術師の陸、僧侶の美咲。そんな高校生パーティは一番最初のスキル鑑定が終わった後、俺が国王からこの屋敷に追放されたことを聞いたらしい。
そしてその後、王都で焼き鳥屋台をやってた噂を聞きつけ俺のことを調べていた。勇者たちは、もしかしたら【業務用スーパー】のスキルが何かしら食べ物を取り寄せるものだったのではないかと気づいたのだ。
そして厚かましいことに【業務用スーパー】の食べ物を一度食べてみたいと言い出したので仕方なく料理を作ることになった。
あまり気は進まないが子供の頼みだしな。それに同じ国出身のよしみで少しくらい我儘を聞いてやってもいいだろう。どうせなら前世でよく食べていた典型的な食事にしたほうが感動するかもしれない。
そう思って前世でよく朝食で食べていた目玉焼きやウィンナーを白米、味噌汁と一緒に出してやることにした。この前、ドロシーが炊飯器も開発してくれたのでご飯は簡単に炊けるようになっていた。
「おっさん、外のアレはなんだ?」
ふと高校生勇者が窓の外を指さす。その先にはウルフの群れがいた。どうやらバニラが森の狩りから帰って来たらしい。
「あのウルフの群れは俺の仲間だ。お前らが変な行動したら襲われるから余計なことはせずに飯食ったら帰ってくれ」
勇者たちはそれを聞いて微妙な顔をした。冗談を真に受けているらしい。
食事の用意をしているとクラリスとドロシーが部屋からリビングにやって来た。二人とも髪はぼさぼさで服はしわくちゃだ。こいつら自分の家のように緩みきっているな。
「ダイスケ、ご飯作るの?って誰こいつら」
ドロシーが眠そうに問いかけた。勇者たちはその姿を見て驚いている。
「え!?なんでここに"無窮"のドロシーとの"赫焔"のクラリスがいるんだよ?」
なんだその中二病くさい二つ名は。いやちょっと格好良いけども。
高校生勇者に聞いてみると、この二人は普通の冒険者が届かないほど遥かに高い能力を持っており、異名がついているらしい。
二人とも最初にS級だと言っていたし、普通の冒険者は皆知ってる有名人なのかもしれない。俺にとっては飯を食わせてやってる小娘みたいなもんだけどな。
クラリスとドロシーが目の前に現れてから、高校生勇者たちは畏まってぎこちなくなった。
「それで勇者様たちの冒険の具合はどうなんだよ?」
「お、おう」
俺が気を利かせて話題を振ってやると徐々に今までの冒険の話をし始めた。
勇者たちの旅はあまり快適なものではなかったという。特に最悪なのが食べ物だと不満を漏らした。冒険の途中で食料が得られないときが多々あり、そこら辺のキノコや草を食べていたこともあるとか。
そんな話の合間に、出来上がったウィンナーと目玉焼きの定食を食わせてやった。
「え?何で米があるんだ?うおおおお!おっさん、この飯美味すぎるぜ!」
勇者たちは目玉焼きとウィンナーのシンプルな料理を夢中で食べた。特に温かいご飯と味噌汁を食べて感激している。俺たちはこの屋敷にいてずっと美味い飯を食っていたというのに勇者は大変そうだ。
「おっさん、良かったら俺たち勇者パーティの炊事担当として雇ってもいいんだぜ?どうせここに居てもやることないし暇だろ?」
俺はその馴れ馴れしさに苦笑いしていたが、横からクラリスが割り込む。
「貴様、ダイスケの事を舐めているのであればここで斬るぞ」
クラリスはいつのまにか剣を取り出し、勇者の首元へと突きだしていた。連れの魔術使いの少年と僧侶の少女は一瞬の出来事に顔を青ざめる。
おいおい、なんでこいつは屋敷で勇者に斬りかかろうとしてるんだ。危ないじゃないか。俺は慌ててクラリスを制止して間に入った。
「まあ落ち着け。俺は金にも困ってないし、飯にも困ってない。それ以上余計なことを言うなら、このままクラリスに首を切り落とされるか、外でブラッドウルフのエサになってくれ」
高校生勇者は発言の何が悪いか分かっていないようだったが、それ以降大人しくなり無言になった。
食事が終わり屋敷の外で勇者たちを見送ったとき、ふと疑問に思い、なぜこのタイミングで屋敷に来たのかを尋ねた。
「最近、ゲイブランドがセデリアの王都に攻める計画をしているらしいんだ。俺達はその防衛として呼び出されたって訳さ。心配しなくてもこの勇者様が王都を守ってやるから大丈夫だぜ」
高校生勇者はそう自信満々で言うと王都へと向かっていった。こういう時にも駆り出されるとは勇者は大変だな。そこだけはちょっと同情する。
しかし数日もしないうちに、王都はゲイブランド軍に攻め込まれ勇者たちは瀕死の状態になった。
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