第3話 美しい世界で...

その小説は死や生きる意味について書いてあった。なんとなーく読み進めていたが、あるフレーズが気に掛かった。


「人は死ぬ為に生きる」


一理ある言葉だ。

確かに死を待つしかない人間達にとっては生きることは結局のところ意味を成さない。頑張って地位や名誉を築いてもいつかは崩れる。

あの中国の皇帝達でさえ叶わなかった野望だ。

だからこそできるだけ人は幸せを望む。

しかし今の俺にとって生きることは死を着飾るためのものですら無い。

この言葉は俺の生きることの必要性を否定してくれた。最早俺に生きる意味は無い。

そうして俺は死ぬ為に買い出しへ出かけた。

道中、見慣れた景色を眺めながらゆっくり歩く。別に感慨深いことは無い。意味なんてないから。俺は安価なロープを購入しなけなしの銭を店員に渡した。

そうして自分の部屋に戻って来るや否や、ネットで首吊りの準備を行った。作業は淡々と進み準備は整った。後は縄を首に掛けて終わりだ。この汚れきった世界からも。学校からも。生活からも。今際の際ぐらいなんか涙でも出るんかなとか思っていたけど、そうはならなかった。

一度深呼吸した後、ロープの下に設置しておいた台の上に足を乗っける。ロープに手を掛け首を通す。後は踏み台を蹴っ飛ばせば死ねる。


「じゃあな、汚れた世界」


そう言って台を蹴飛ばそうとした瞬間、


ものすごい勢いで床がガタガタと震え始めた。

一瞬戸惑ったが窓の外を見て、悟った。

ものすごい爆発が巻き起こり、目線の先の建物がことごとく粉々になっていた。巨大な黒煙が立ち上がり、街を包む。

おそらく第三次世界大戦が本格的に戦闘を開始したんだろう。おそらく俺の街、いや日本は終わりだ。きっとクラスの奴らもみんな。

俺はその景色を見て息を呑んだ。

そして思ったんだ


「ああ、なんて美しい世界だろう」





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美しい世界で @soboropan

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