フラ〇ケンの、お正月!

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 フラ〇ケンは、2年近く前に大好きな朱美と付き合うことになった。その時の朱美は、こんなことを言っていた。


「私が付き合うとしたら……イケメンで~♪、背も高くて~♪、とにかくスタイルが良くて~♪、年収は……そうねぇ、最低でも3千万? 欲を言えば1億くらい欲しいけど~♪。それで、車は高級車で~♪、プール付の豪邸に住んでいて~♪、それで、それで……」


そこでフラ〇ケンは、有無を言わせず“砂かけ婆の惚れ砂”を使って、朱美を自分のものにした。ちなみにフラ〇ケンは土木工事の日雇いの仕事をやっていた。


 フラ〇ケンと朱美の仲はトントン拍子で進展、スグに婚約、結婚ということになった。結婚してから初めて迎えるお正月、フラ〇ケンは苦しんでいた。朱美はフラ〇ケンにベッタリだったが、それは“惚れ砂”を使ったためで、朱美の本当の心ではない。


“俺は、卑怯な手口で朱美の心を操ってしまった!”


 フラ〇ケンは後悔していた。人の気持ちを惚れ砂でコントロールするなんて、ヒドいことをしてしまった。朱美に申し訳無い。朱美の家族にも申し訳無い。『結婚祝い』ということで、朱美の親から5LDKの一戸建ての家を買ってもらった。朱美の家は金持ちだったのだ。


 お正月、朱美は料理が出来ないのでフラ〇ケンが雑煮を作り、豪華なおせち料理を配達してもらった。お正月、区切りの時期だ。フラ〇ケンは、朱美を解放しようと思った。“良い思い出だった。だが、俺はもう朱美を惚れ砂で縛りたくない”。


 フラ〇ケンは、小さな小さな小瓶を取りだした。中には、惚れ砂の効き目を無くす砂が入っている。“もう、終わりにしよう”。


「朱美、ちょっとだけ、頭に砂をかけてもいいかな?」

「何? 何かのおまじない?」

「うん、幸せになれるおまじない」

「あんまり沢山かけないでね。掃除が面倒臭いから」

「じゃあ、かけるよ」


 フラ〇ケンは、朱美の頭にほんの少しの砂をかけた。


「……」

「……」

「あの、この砂は何だったの?」

「あれ? 何も変わらない?」

「何にも変わらないんだけど、なんだったの?」

「朱美、俺のこと好きか?」

「何を言ってるの? 好きに決まってるじゃない」


 いつの間にか、朱美は本当にフラ〇ケンのことを愛するようになっていたのだ。知らぬ間に愛は育っていた。そのことがわかって、フラ〇ケンは嬉しくて泣いた。



「やっぱり、この砂は幸せになれる砂だったよ」







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フラ〇ケンの、お正月! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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