運命
No.1
これはまだ私が10代の頃、一人の人を深く初めて愛したお話。
————2000年代初め
高校生の部活の人気の中心。ー軽音学部。
友人の数人はギターを背負って登校
中学生の時には見なかった景色も馴染んできた頃だった。
「おいっすー。おはよー。」
「おはようー!」
朝の校門で挨拶を交わす生徒たちを横に友達のアンナと登校していた
「みーちゃん明日バイトー?」
「そうそう、海行くから頑張る!!」
幼稚園からの幼馴染のアンナと毎年海に出かけるのが恒例行事。
高校生には少しオーバーワーク気味な気もするが週5はバイトを頑張る。
学校とバイトの往復をしているほうが無駄使いもしなくて済む!そう思っての我ながら完璧な作戦だ。
「じゃあまた明日!バイバーイ!」
高校生の1日というものは驚くほどにあっという間に過ぎていく。
授業中は眠たい目を擦り
変な話し方の科学の先生の口癖をこっそり数えてはノートの端に正の字で書き込んでいく
そうすると授業は気づけば終わり、友達と帰宅後あっという間にバイトの時間だ。
「いらっしゃいませー!」
「お、渡辺ちゃん今日も2つねー。」
見慣れたお客様の指2本を見てすぐに後ろの煙草を2つ取りに行く。
「今日は少し早くないですか?」
ピッとレジを打ちながらいつもの会話を始める。
「そうなんだよー。さすが渡辺ちゃん。今日は会議早く切り上げれたからラッキーよ。
帰って嫁さんの手伝いがあるからアンラッキー?なんてな。」
「あはは!いいじゃないですかー!幸せですね。」
一言二言、会話するだけで大体その人がどんな人か分かるようにもなってきた気もするので接客は自分には向いている。とも思っていた。
「ありがとうございましたー。」と常連客を見送りドリンクの品出しを膝をつきはじめようとしていた。
綺麗に並べれるの気持ちいいんだよね、と心の中でつぶやいていると
「渡辺…さん??」
ん?と思って立ち上がるとそこには見覚えのあるような顔が上にある
背の高い同世代の男の子。
でも何故か見覚えが…
同じ幼稚園‥そう、そうだ高川くんだ!
高川宗太 タカガワソウタ—。
一気に色々な脳内の情報がフラッシュバックしてフリーズする私を見て
少し意地悪そうに笑った彼は友達とドリンクを片手にレジまで向かうので私もすかさずレジへ戻る
「いらっしゃいませ」
男子3人の中でも1番背の高い高川宗太くん
私も少し緊張しているのか、気まずい緊張のレジ打ち。
そしてお会計が終わると小さい声で
「あのさ、リョータわかる?渡辺さんと同じ中学の」
「あ、うん、わかるよ?」
「リョータに番号聞いてもいいかな?渡辺さんの!実はHPで見てて可愛いなと思ってて‥」
※HP=平成のInstagram
ぇぇぇぇええ!まさかのナンパー???
幼稚園のとき以来だからか?
本当は脳内パニックな中なんとか冷静さを保とうと軽く息を吸ってから
「べ、べつっに大丈夫ですよ。」
やっばい少し噛んだー。しかもいいって言っちゃったー。と恥ずかしくなった私。
顔が赤くなってないかなぁと考えるほど赤くなっているのを実感。
「やったー!ありがとう!連絡する!じゃ、バイト頑張って!」
嬉しそうに手を振りながら帰っていく彼らを呆然と眺めながら
あの状況で知り合いで断れなかった‥恥ずかしい‥
そんな脳内の言葉を隠すようにバイトに集中しようとしていた
高川くんは小学生も中学生も隣の学校で幼稚園しか一緒ではなかった気がするが
一つ覚えていることがある。。
カエル投げてきたやつだー!!
その時は幼稚園生だったがその記憶だけはハッキリと覚えていた。
カエルは何故か小さい頃から苦手だったのだが
幼稚園で外遊びの時にカエルを顔面に投げつけてきた男子が居たのだ。
これだけは絶対に覚えている。
引っ込み思案だった私は静かに他の子たちを慎重に観察する子だった。
そしてすぐに泣く泣き虫で嫌なことは全て覚えていたのだ。
帰ってすぐにアンナにウィルコムをかける
「ねー、アンナ高川って覚えてるー??高川宗太」
そんなことで速攻親友に今日の出来事を話し、恋の予感だと茶化されながら
意識してしまっている自分に気づく。
そのままいつもの無駄話を30分ほどし、ウィルコムを切った。
※ウィルコムとは平成に1人一台は所有していた月額1000円程で通話し放題の携帯電話です。
ふぅーー。なんか今日疲れたなぁ、
と思っていると眠りについていて気づけば朝が来ていた。
「おーーい!みーちゃん!!起きてってば!
毎日毎日どうやったら起きんの?」
眠たいっ。うるさーーー。
と目を開けるとアンナが起こしてくれている
「もー無理だよー間に合わないから先行ってて。すまぬぅぅ眠たいぃ。」
「はいはい、黙って着替えて歯磨きねー、急いで!」
思いっきり制服を投げられアンナの大きな声でようやく起き上がり超絶ダッシュで結局用意をさせられた。
学校に小走りで向かいながらブチギレ中のアンナ様に謝りながらの登校。。
朝が苦手で大半が起きれないので面倒見のよいアンナが起こしてくれる毎日。
申し訳ないと思いつつも起きれない
なんとか滑り込みセーフで遅刻を免れる私達。
まじ朝はムリだ、社会人なれんのかなぁ…なんて考え不安になりながら教室に向かう
眠たいまま午前中の授業を乗り切り昼休みに携帯を開くとメールが届いていた。
➖➖➖➖➖
:re
➖➖➖➖➖
おい、高川が番号教えろってさ。笑
なにごと!
教えていいんっすかー?
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:Re:re
➖➖➖➖➖
昨日バイト先に来てバッタリで、、笑
いいよって言っちゃったんで教えといてくださーい。
➖➖➖➖➖
送信。
わー、本当に聞いてきたんだ、、
聞いてくるよね、そりゃそうだわ。
私は嬉しいのか滅多にない状況に少しドキドキしていたのだ。
ピロン♪
➖➖➖➖➖
:Re:re:re
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OK!がんばれ!
あ、そうそう!今度バンドのライブやることになったからあんなと来てくれない?
◯月◯日19時start
ライブハウスくるくる
ドリンク込み1人500円です!まじ人集めノルマあるからお願いしまっす!
➖➖➖➖➖
:Re:re:re:re
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了解!アンナ誘って行ってみるね!
➖➖➖➖➖
あ、アンナに聞く前に返信しちゃったー。
ま、行くでしょ!
そう。ノリは全て適当だったのだ
若い時の私達はこんな風に生きていた。
アンナが教室にやってきて説明を省くためにリョータからのメールを見せる
「いや、もうライブ行く確定じゃーん。おっけい!空けときまーす!」
「ありがとうー!よっろしくぅー!!」
そう言って二つ隣のクラスのアンナの教室を出て、自分の教室に戻った。
授業中、くしゃくしゃになった手紙が飛んできた。
斜め後ろのゆり子だ。
紙には〝今日、コムるべー?〝と書いてあり
笑いながら振り返るとゆり子も笑っていたので親指でOKサインを出しておいた。
夜お風呂上がりにゆり子にメールを送っていたらしばらくしてウィルコムが鳴った。
「やっほー、なんかコム久しぶりな感じ?」
「だね!むっちゃバイト入ってたわ。」
私の1番のウィルコム友達ゆり子は高校に入り仲良くなった親友。
2年になった今でもウィルコムはバイトがなければ毎日していた。
ゆり子にももちろん高川くんの話をすると、きゃーーー!っと大興奮。
ゆり子はディズニーが大好きで王子様を待っているので王子様と思える人じゃない限り付き合わないらしい。
「いいなー!そんな高身長メンズがみやびと並んで身長差どれくらいか見て見たーい!笑」
「まじ、アンナにも同じことでからかわれたわ。」
私は身長が150cmしかないので大体の人にはチビ扱いをされるのである。
ちなみにゆり子は165cmでサラッと見下ろしてきては飽きもせず今だにからかっては面白がってくる。
中学校の同級生バンドがライブをする話をしたり
たわいも無い会話で0時すぎでさすがにまたアンナに怒られると慌てて電話を切った。
「渡辺みやびさーーーん!朝ですよーー!!」
一階の玄関のほうから声がした
「おはようー!すぐ行きまーす」
予想外の返事にびっくりするアンナ
「アンナちゃんいつもごめんねー、今日は珍しく起きてきたのよー。」
母があんなに驚いて話かけていた。
行ってきまーす!
今日も学校へ向かうが走らなくて良い。そして気分が良い。
「で?」アンナがニヤついている
「え?なに?」
「なに?じゃないでしょーよ。朝起きれるって高川くんから電話来たとか?」
「忘れてた!高川くん電話来てないよー?ゆり子と話し遅くまでしてたけどなんか変な夢見て起きたんだよね!」
「なんだー!高川くん話楽しみにしてたのに。笑」
話しながらも今日見た夢を思い出していた。
雪?…雪景色だったよーな?
誰かに駆けていって飛びついてた?
なんかめちゃくちゃ嬉しいのに胸が張り裂けそうになって泣いてたような?
悲しかったんかなぁ、、とか思っているうちに夢の記憶もなくなってゆく。
ま、いっか。
夢を思い出しそうになったような?ならなかったような中途半端なところで学校に着いたので夢のことは忘れてしまっていた。
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