第7話

 スライムの体は光の粒子に変わって跡形もなく霧散していた。ジュリーはその中心にある台座らしきものから、何かを手に取っていた。




「これだよな。…石?いやでも形はブレスレットだし、腕に着けるのか?」




「なんだそれ見せて見せてーっと。」




「あ、ちょっと。」




 ジュリーが持っていた石でできたブレスレットのようなものに触れると、瞬間それは青く光り石のようだった表面は美しい金属質の青のブレスレットへと変化した。




「貴方なにしたんですか?」




「え、えーっとただ触っただけなんだけど。」




「…なんか怖いんでこれ以上触らないでください。」




「え、うんめんごめんご。」




 なんだかすごそうなブレスレットだ。先ほど彼が言っていたいびつとはこれのことなのだろう。確かにいきなり触るのは軽率だった。反省反省。ジュリーはブレスレットをポーチにしまうとまたため息をついた。




「はあ、さてあとやることは一つですか。」




「おお帰るのか。ってあれ登んのか。いやー降りるのも大変だったのに上るなんてさらに…。」




 僕がそうしゃべっていた途中でジュリーが刀を僕に思いっきり振り下ろした。それをとっさに避ける。




「えっちょどしたん!?」




「あと始末ですよ。あなたを気絶させて持ち帰れば仕事コンプリートです。」




「いやいやいや!普通についていくって!抵抗しないから!」




「そうもいきません。信用は難しいですし、何より散々騒がしくてうっぷんがたまっていたので。」




「私怨!?」




 ジュリーは無表情で僕に刀を向ける。確かに峰の部分を向けてくれてはいるが




「心配しないでください。痛みも感じないで気絶させて見せます。」




「そうだとしてもよ!それまだ光ってんじゃん絶対やばいじゃん。」




「もう電源は切ってますよ。ちょっと火傷するかもですけど。」




「絶対それより大変なことになるううう!」




 僕は地面に落ちていた、ジュリーのものであろうコードの切れた刀を拾い防御する。一撃を受け流すが、あまりの衝撃に手がしびれる。ニ撃目はよけ距離を取ろうとするがすぐに追いつかれて三撃目がやってくる。それも何とか避けるが服が切れた。みねうちなのに切れた。もう嫌だと僕は逃げるように走り出すが、追ってくる。僕の数倍速い気がする。




「もう嫌だあああなんでこんな目にいいいい!?」




「なるほど理解しました。視点の誘導ですか。あなたは腕や目を特殊に動かし相手の無意識な反射を利用して誘導している。だから当たらなかった。僕みたいに脊髄反射で動くタイプにはなかなかつらいですね。これを実現するには高い観察力と技術が必要だ。ならば警備を難なく潜り抜けてもおかしくはない…ってことですかね。」




「すっごい分析されてる!?なあもうやめようぜ。いいジャン頑張って支援したんだからいいじゃん。ある意味僕命の恩人よ?」




「何の話か分かりませんが、いいですよ。」




「なんでそうまでして僕を…っていいの!?」




 ジュリーは足を止め刀を収めた。僕もやっと一息つき、少し気が抜ける。先ほどまで殺気のようなものがものすごく突き刺さってきた気がしていたのに、今の彼からは全くそれを感じなかった。それがむしろ怖い。




「いえ貴方がどうやって警備を潜り抜けていたのかだけものすごく気になっていたので、一応わかってよかったです。僕は完全に理解できるほどの頭はありませんのであとは得意な方に任せるとします。」




「も、もーやだなあジュリーくーん。脅かして―。」




「うっぜえ。」




 そのげんなりとした顔を見て、初めて本当の彼と接した気がした。なんだろうものすごく泣きたくなってきた。涙を拭こうとハンカチを取り出そうとしたのだが、その時首に知らない腕が巻き付いていた。




「まあ、気絶はしてもらうんですけどね。」




「え、えー。マジで?」




「心配しないでください。苦しいのは10秒だけですから。」




 こうやってすぐ油断するのが僕の悪い癖らしい。その後彼の華麗な裸締めで僕の意識は遠のいていった。

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