青葉の冒険者たち
第1話
ピンポーン
その日ブラッドリー邸にチャイムが鳴った。今日は来客の予定などなかったはずだがこのまま放置するわけにはいかない。各部屋の掃除にいそしんでいたジュリー・ブラッドリーは玄関に行き戸を開けた。
「ごきげんよう。今日はどのような御用…事で…。」
相手の姿を見てジュリーは目を丸くした。そこにいたのはジュリーほどではないが小柄で金髪碧眼な女性で…あればよかったのだが、残念ながら男性が笑顔で立っていた。
「ヘイ!遊びに来たぜ。」
「そうか帰れ。」
ジュリーの目はすぐにジト目になり心底嫌そうにそう言った。彼の名はブレイク・ウォード。ロンドン警視庁巡査部長である。ブレイクはそんなジュリーの不遜な態度に気にする様子もなく話を続ける。
「そんなこと言うなよジュリー。昨日嫁のプリン食べちゃったらさー。けんかになって実家に帰っちゃったんだよお。寂しいから構ってちょ。」
「気持ち悪いわ。ならさっさと奥さん追いかけて土下座して謝って来い。」
「なら一緒に来てくれよ気まずいんだよおおお!」
「知るかぼけなす!一人でやれ!」
抱きつこうとする変質者を足でけん制しながら扉を閉めようとするも抵抗されてしまうジュリー。運が悪いことにそこに同僚のメイド、モモセヒカリが来てしまう。
「あら、ブレイクさんお久しぶりやね。」
「どうもどうも。」
「大丈夫ですモモセさん。もう帰るそうなので。さっさと帰るそうなので!」
「そんな冷たいこと言うなよおおお。」
足蹴にして追い出そうとするジュリーだったが、モモセに止められてしまった。
「もージュリー君。お友達は大切にしなきゃつまらんよ。」
「友達じゃないです。迷惑千万な不審者です。」
「ひどい!」
「そんなこと言って。ブレイクさん、どうぞ入ってください。お茶でも出すばい。」
「ありがとうございまっす!いいだろジュリー?」
「…全くモモセさんは人が良すぎますよ。」
仕方がないのでおとなしく扉を開けることにしたジュリーだった。
客間に通されたブレイクはテーブルの席に着く。モモセに促されジュリーはその反対側に座った。その後モモセは二人に紅茶とバウムクーヘンを出す。
「なにこれうま!」
「本場ドイツから届いた一級品だからな。味わって食べろよ。」
「わかったわかった。お代わりもらっていいですか!?」
「話聞いてた!?」
貴族の屋敷内での行為とは思えないほどあっという間にバウムクーヘンを平らげるブレイク。その様子に突っ込みを入れるジュリーであったが、モモセは楽しそうにくすくす笑いながらもう一切れ出してくれた。
「そういえば二人はいつの間にか仲良うなっとったけど、最初はどういう出会いだッたと?」
「仲良くないです。これが勝手についてくるんですよ。今も昔もそうです。」
「嘘つくなって。お前だって追い掛け回したじゃんかよ。…そうですね、最初にあったのは二年前の夏だったかな。いきなり上司に呼び出されて…。」
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