第2話

 関所らしき場所につくと、二人の若い男女がいた。エリザベートが声をかけるとさわやかな笑顔で男性のほうが応対する。




「初めまして。観光ですか?」




「はい。弟と二人で参りました。とても美しい村だとお聞きしまして。」




「そうでしたか。ではこちらの用紙に記入をお願いします。」




「わかりました。」




 外面の良さレベルマックス!笑いをこらえるジュリーにエリザベートは記入を続けながら笑顔で後ろ蹴りした。




「これでよろしいでしょうか?」




「大丈夫です。あと申し訳ありませんが、入村する前に採血をさせていただかなければならないのです。」




「採血ですか。変わったことをするんですね。」




「申し訳ありません。この村はいまだ医療施設などは充実していないので、疫病対策をしなければいけないんです。数年前も世界中で大変なことになりましたし。」




「そうでしたか。僕は構いませんが、姐さんは大丈夫ですか?」




「もう。私ももう大人なのですから大丈夫ですよ!でもあまり痛いのはちょっと…。」




「指から採取しますのであまり痛くはないと思いますが…。」




「大丈夫だと思いますのでお願いします。」




「そうですか。ではこちらに…。」




 男性に連れられた場所にあったテーブルに採取に使われる道具が置いてあった。指示されるとおりに採血を行うと、全然痛くなくジュリーは感動した。エリザベートも同様に採血し入村が認められた。




「ようこそリラルカ村へ!村の案内などもございますが、いかがでしょうか?」




「うふふ、商売上手な方ですね。でも、お高いんでしょう?」




「あはは、二時間コースで30ユーロですよ。ガイドブックには載っていない名所などもご案内しますが。」




「ではお願いしようかしら。」




「ありがとうございます!では係りの者を呼んでまいりますのでしばらくお待ちください。」




 待っている間二人はあたりを見渡した。




「おい見ろジュリー!村の中にあんなにでっかい滝がある!」




「ミネラルウォーターのラベルにできそうな感じですね!それに見てくださいよ姐さん!水がすっごく透明度高いですよ!川魚も泳いでます!」




「おお!食べられるのかな!?釣ったりして食べられるのかな!?」




「すでにお楽しみいただいているようで幸いです。」




「「!!」」




 二人して盛り上がってしまい案内係の人たちがきたことに全く気付かなかった。




「も、申し訳ありません盛り上がってしまって…。」




 エリザベートの恥ずかしがる姿に先ほどの男性と、案内係であろう女性はクスリと笑った。




「では、案内係の彼女にあとは引き継がさせていただきます。どうぞ観光をお楽しみくださいませ。」




 男性は丁寧にお辞儀をしその場を去った。だがその時、




「ん?」




「どうかしたかジュリー?」




「…いえ別に。」




 妙な違和感を感じた。


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