【中2リレー小説】透明な花火に彩りを。

日陰このは PLEC所属

第2話

第一話 こよいはるか

https://kakuyomu.jp/works/16818093091293655131/episodes/16818093091296031830


 「それでは充実した夏休みをお楽しみください。」

何が充実しただよ、宿題ばっかり出して!


私は先生たちの建前の言葉をあっさりと受け流し、雪崩のように押し寄せる生徒の波をかき分けて、昇降口へと歩いていった。


「ねぇ、沙彩。」


「ん?佑菜じゃん!」


前田佑菜まえだゆなは小学校の頃からの友達だ。よく公園で泥団子を作っては投げ合っていた仲だ。


「とうとう夏休みだね!」


「そうだね。宿題終わるかなー」


「自由研究さえ終われば後は楽でしょ。」


「勉強できる人は良いですねぇ。」


佑菜はなんてったって頭が良い。この前の中間テストで全問正解という良い意味でヤバい人間だ。良い意味で。


でも、そんな佑菜とは、悲しいことに帰り道の方向が違った。だからもうここでお別れだ。


「じゃあね、沙彩!」


「じゃあね!」


「夏休み楽しんで!」


私は佑菜と別れて、いつもの帰り道をいつも通りに辿った。



 今日は、昼休み以来透也とお喋りしていない。どうしたのだろうか。


これから夏休みなのに、最後に会えないのは少し悲しい…私はいつからそんなことを考えしまう思考回路に組み変わってしまったのか、自分でも仕方なかった。


それでも、その寂しさは紛れもない事実だった。すると、後ろから声がした。


「おい、沙彩!先に帰んなよ〜。」


「透也!?」


「一人だとマジで道迷うから!」


「もうこっちに引っ越してきてから4ヶ月も経ってるでしょ。いい加減覚えなさいよ。」


「いやぁ、分かりづらいよ。昔いたのは田舎だったから分かりやすかったな〜。田んぼと田んぼの間、歩くだけだし。」


「ふーん。平和そうでいいねー」


「学校は殺伐としてたけどな。」


透也は、どうやら転校する前の学校では、友達がいなかったらしい。


そのせいで性格が内向的だと本人は言っているが、私にはそうは思えないくらい、彼はずっと笑顔だった。


「ほんと、あの時では考えられないくらいこの学校は穏やかでいいよ。」


「印象がいいのは、良いことだね。」


「まあ、一番最初に隣にいた奴が穏やかだったのもあるけどな。」


「それって私のこと?」


「あと、バカだったからな。」


「それはどういう意味ですかね?」


「ふん」


彼が鼻で笑っていたのは、幻覚だということにしておいた。気づけば、目の前には私の家があった。


「じゃあな、沙彩!」


「うん。じゃあね、透也。」


私は透也に手を振った。透也は力強くコンクリートに足を置いて、手を振りながらも後ろを向いたまま、遠くに歩いていった。


私は、透也が見えなくなったところで、手を下ろし、家に入った。



 家に入るなり、お姉ちゃんと透貴さんのイチャイチャが耳を刺激した。


「透貴、今度の夏祭り行かない?」


「いいね!いつだっけ?」


「来週の日曜日かな?」


「10日後か!」


「じゃあそこまでに宿題を終わらせなさいよ。」


「はーい。」


母親は何故か私の胸にも釘を刺す言葉を発したが、私には夏祭りに行く友達もいないので受け流そうとした。その時だった。


「沙彩もよ!早く宿題終わらせなさいね!」


うう、私のライフはもう0よ!容赦ない母親に近づかないようにそっと家の中を歩いた。そして、私の部屋に入った。


 ふと、お姉ちゃんと透貴さんの声がした脳内でフラッシュバックした。


夏祭り…佑菜と行きたいなー…いやだめだ。佑菜は今塾で頑張ってるんだ。


彼女はいい高校に入るために、自ら塾にはいって、勉強をしている。私には考えられない。


「はぁ…勉強しないと…」


そうつぶやいたあと、私はゆっくりと、夢の中に落ちていった。



 5日が過ぎた。私は母親の狂気の猛攻にやられて、宿題が次々と進んでいった。


透貴さんは頭が良いので、時々問題集を持っていくと、丁寧に教えてくれた。


私の夏休みは順調なスタートを切った。しかし、勉強嫌いな私には、こんな夏休みは要らない。


少しだけ、自分に癒やしを求めていた頃、私の携帯に一通の電話が来た。透也からだ。


「どうしたの?透也。」


「ねぇ沙彩。一緒に夏祭り行かない?」


第三話 犬塚ゆわん

https://kakuyomu.jp/works/16818093092896815418/episodes/16818093092896893719

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