第30話 トイレの中にも押し入れの中にもいない

「チュンチュン」


 小鳥の声が聞こえてくるな、爽やかな朝の一時だ。

 今日も〈さっちん〉は洗濯物を干している、なんて洗濯好きなんだろう、俺は最近チビッていないのに、なぜ毎日なんだ。

 俺は一週間に一度だけしか洗濯なんてしてなかったよ。


 疑問を考えつつ、異界へ行こう、考えたところで尿は出るけど、結論は出ない。


 〈ミミちゃん〉と〈ハッチ〉は、ケツがポロンと丸出しだった、こいつ等は裸族なのか、いつも乳繰り合っているのか、困ったものだ。


 だけど俺は喜んで、二人の間に挟まれにいく、女体サンドウィッチの完成だ、俺は具のウインナーソーセージだろう、ぶとっいぞ、嘘だけどな。


 「あぁん、〈よっしー〉様はねちっこくなられました。 たまんないです。 延長してください」


 「ふぅん、使徒様は、とてもしつこく触られましたので、合格点をあげます。 でも僕を愛しているのなら、もう一回出来るでしょう。 ほら見て、足は開いたままですよ」


 ふぅー、四回はキツイな、だけど俺の体はどうなってしまったのだろう、神秘術〈時はなし〉があると言っても、同じ異界で効果があるはずがない、俺の性欲は異常なんだろうか。

 そうかも知れないが、知ったこっちゃない、欲望のままに生きてやる。


 「〈よっしー〉様、また戦があるらしいです。 無理なさらないでね」


 「近くの国が力をつけたようです。 使徒様も気をつける必要があります」


 「分かった」


 と言ったものの、戦の情報は今初めて聞いたし、第一昨日の今日だよ、どう気をつけるんだ、ちょっと無理なんじゃないの。

 神と人間の違いってヤツか、時間のスケールが違い過ぎる。


 一日で情勢が変わってしまうなんて、もっとジワジワと来てくれないと俺の理解が追いつかない、急に好きって言われても固まってしまうだけだ。

 言われたことは、一回もないけどな。



 情報を仕入れるために、〈アッコ〉の方へも行こう、どんなパンツを履いているか楽しみでもある。


 真っ赤だった。


 純白のアオザイから透けて見えるのは、赤い下着だ、情熱の赤なんだ。

 良い趣味しているな、さすがは〈アッコ〉だ、闘牛のように猛然と襲いかかってあげよう。


 「あっ、いきなり何ですか。 あいさつもしないで、口づけをするなどと。 使徒様はがっつき過ぎます。 女は雰囲気を大切にするのですよ」


 「ごめん、〈アッコ〉が美人過ぎるんだ。 だから待てないんだよ」


 「うふふっ、私が罪な存在なのはそうでしょうけど、まずは、話しを聞いてください」


 「はい。 分かりました」


 「お願いしていました、贈り物はどうなりました」


 「はい。 めどはたっています」


 可能性だけだけど、正直に言うのは止めよう、何とかなるしょっ。


 「早くしてくださいね。 国は十倍の速さで、時が過ぎ去っていくのですよ」


 そうか、昨日から今日で、もう十年が経っているんだ、でもそんな実感は俺にはない、だから何とかなるしょっ。


 「はい。 急がして頂きます」


 「よろしい。後、長からの伝言です。 この国を狙っている勢力があるようです。 使徒様も十分注意するようにとのことです」


 「うん、気を付けるよ」


 気をつけようがないが、それを言ってもしょうがない、〈アッコ〉を心配させるだけになってしまう。


 「ふふっ、素直で良いお返事ですこと。 それでよろしくってよ。 ご褒美に、私の下着を脱がしたいですか」


 「うんうん、赤いのを脱がしたいです」


 「うふふっ、そうしたいのなら、私をその気にさせてみなさいよ。 燃える赤のような情熱を、私へぶつけて欲しいですわ」


 俺は熱い舌を〈アッコ〉へねじ込んで、ふらついたところを、熱いしたを〈アッコ〉へぶち込んでしまった。


 〈アッコ〉は偉そうなことを言っていたが、何回もキスしてお尻を揉んだら、もう中心部はドロドロになっていたと思う。

 名実ともに俺の女になったみたいで、なんだか嬉しくなってしまう。


 それなのに、赤いパンツをゆっくり降ろす余裕が、俺には無かったんだ、修業不足です、未熟者なんですよ。

 それとも、フェチかも知れません、パンツがこすれてビクンビクンとなりました。


 「はぁ、はぁ、下着も脱がさないまま、するなんて。 いやらしいです」


 そうなのか、裸の方もいやらしいぞ、だけど〈アッコ〉が言うのなら、そうなんだろう。

 その証拠に、裸よりも興奮したらしくて、赤いパンツがドボドボになっている。


 「我慢が出来なかったんだ」


 「しょうがないですね。 でも熱いものは頂戴いたしましたので、嬉しく思います。 ふふっ。二回目は落ち着いて出来ますね。 ふぅん、私の全てを見たいでしょう」


 見たいよ、穴があ空くまで見たい、もう空いているけど、広げて奥を見れば良いんだ。


 「あぁん、全てと言いましたが、奥の奥まで見ないで。 そこは見るところじゃありません。 満たして頂くところです。 んんもぉ、恥ずかしいですわ」



 異界から帰った、あれ、なんかおかしいぞ、すごい違和感を覚える。

 洗濯物が風に揺れているのは良い、異界へ入る前に見た光景だ。


 だけど干していた〈さっちん〉がいないんだ、いつもと違っている光景だ、どうしたんだろう。

 気になって、社宅の中を探してもやっぱりいない、トイレの中にも押し入れの中にもいない。


 だんだん心配になってくる。


 走って勤めているカフェの前に行っても、まだ準備中で、中には人影さえもない。

 十時開店だったよな、まだ八時にしかなっていない、いなくて当然だ。

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