第11話


〜ホセサイド〜




———・・・小さな勇者召喚者は、巻き込まれだって聞いてたんですけどねぇ?


こちらがお腹を鳴らしていたら、マジックバッグとか言う規格外のバッグ内から極上の、瑞々しくて口へ入れたら瞬時に蕩けるように甘くて美味しい果物・・・。


えっ、これって果物なんですか!?な丸々と1つ1つが大きな木の実を分けて頂きました。


・・・え・・・勇者様って言うより最早神様なのでは?とは皆が思っていることだと思います。


砂漠地帯ではなかなか植物は育ちません・・・あるのは砂漠に特化したクソマズ木の実が何種類か・・・全部味とかは度外視で、当然輸出とかには向かない物なんですけど、これでもオアシスに実っていれば貴重な食料として大切に収穫される代物なんですよ?


他国で取れる作物はこちらの足元見られて、年々高騰していってるのに皆気づいてます。


あからさまな値上がりに、不躾な嘲り視線が不快ですがそれらを我慢して手に入れる作物は流石にうちとは比べ物にならない位美味しい物で、高級品でした。今までは。


それらを軽く凌駕するほどの美味しい神のような出来の作物は、ミリア様作の作物だそうで・・・様はやめてくれ?そうですか・・・本当に駄目でしょうか?・・・駄目らしいです、しょんぼり。


ミリア様は・・・じゃなかった、ミリアさんは異世界のこちらでの作付けが上手くいくかも未知な状態で、貴重な作物をこちらが恐縮してしまう位のレートで取引してくれます。


いや、皆がこの位!って出した物には、多すぎる!とミリアさんから一回返却されまして・・・ミリアさんがこの位で!と言った対価で交換しているのですが・・・逆の意味で皆から不満がですね。


・・・安すぎるって言うのもまた、不安になっちゃうものなんですねぇ、私も含めて何か涙が出て来てしまいますよ・・・搾取されるのに慣れていたんですかねぇ・・・。


それでもミリアさんの言い分のレートはかなり低いと思いますが。


本人はふんす、ふんすと鼻の穴を膨らませて満足そうなのが何とも言い難いですが・・・もうちょっと払わせて欲しいものです。


折角戦って得るはずであった報酬がおじゃんになってしまって作物自体は手に入りませんでしたが、ミリアさんと一緒になれたのは我々にとってはかなり行幸と言えるでしょう。


ミリアさんのご希望の種なら、作物程では無い程度の値段で手に入ります。


売ってる人達は皆、我が領地では育たないだろう事を知っているので快く結構な数量を放出してくれました・・・勿論内心爆笑されてたりバカにされていたりしているんだろうなぁ、と簡単に察せられる様な目で見られてましたが、気にせずダグラスと手分けして数を揃えます。


安過ぎる対価に、せめて何かしたいと思っていたので別行動での買い物位は安いものです。

寧ろ争奪戦でした・・・。フフフ。


その時にあのバッグから腰部分に巻く用の小さめなポーチ?と言うカバンを渡されまして・・・え、これも沢山物が入るのですか!?


しかもミリアさんの手作り・・・。

凄すぎますよねぇ・・・勇者様ってこんなのも作れるから勇者様なんですかねぇ?

と皆で感心してしまいました。


それに分かれてる時分の為にと、あの天上の果物をギュギュッと詰めて渡して頂いて・・・。

道中どうぞって、本当勇者通り越して女神様!


私、ちょっと別の信仰心が芽生えそうな今日この頃です・・・。


ちょっと力を入れれば潰れてしまいそうな果実をそっと腰バッグから慎重に取り出してパクリ。

うん、これはヤバイ物ですね、はい。

口に入れる前の匂いの段階でもう、うっと〜〜りして、飛びます。


これに慣れたら生きていけなくなる自信しかありません。





〜ダグラスサイド〜




———・・・砂漠の民は常に食べ物にも水分にも飢えている。


今回の褒賞では本当、肩透かしを喰らって、もう我慢の限界だったんだ。


“勇者召喚”とかマジふざけんなっ!


そんなの俺らが望んでる訳ねーだろうがっ!!


今回も俺らの国からの人数が一番多く、そして前線に立って戦ってたのも俺らだろうに・・・それにも関わらず、結果はコレだ。


当の昔に限界は感じていたんだ、皆。

只、我慢していただけだ。


どちらにしろ未来が暗いなら普段からイケすかない視線に、そう言う扱いをしてくる奴らとの決別の方が小気味良いすらある。


チビ勇者には罪はねぇ。


寧ろ俺らみたいに爪弾きにあってて直ぐにでも連れ出してやりたかった位だ!


その勇者召喚で物資どころか報奨金ですら渋られて悠長にパーティーなんか出てられっかよってんだ!


国のメンツで腹は膨れねぇ、なんて言うやつがいたらどつき回してやろうと密かに決意していたんたが、幸い皆が同じ意見だったのは行幸って奴だったよな。


ラカン、お前の所為じゃねーって。

もう既におかしな間柄にはなってたじゃねーか。もうずっと、長い間だ。


そんな俺らにまさか8割同情で連れ出した勇者から作物の提供があるなんて思ってもみねーだろ!?


等価交換って言うが、めちゃめちゃレートが低過ぎなんだよな・・・言っても聞かねー結構頑固なチビ勇者を皆は直ぐに身内認定した。


同じ女同士だからアデル様に一番に懐いたのかと思ったが。


・・・あいつ時々中におっさん飼ってるんじゃないかって反応してるのにアデル様とラカン以外の皆が気づいている。

・・・本人、多分バレてないと思ってそうだから誰も指摘しねーけどな。


側から見てるとあの百面相具合が面白いし。


年の一番近いであろうサウロは凄い生温かい目で見てるんだけどな・・・気づく様子は一切無いな、ガハハハハ!


チビだから戦えないんだと思ってたら種族特性って、どう言う事だって思ってたら・・・襲ってくる魔物、全然チビに興味持たねーんだよな!


普段食欲旺盛でそこら辺にある無機物ごと大口で何でも口に入れるガイナって言う砂漠地帯にしか生息しない、大き過ぎるミミズ型の魔物もチビにだけは反応しないんだぜ!?

どうなってんだって皆で2度見3度見したぜ?


でも、直接戦う意志の無い、例えば誘拐目的な魔物からには寧ろ目立って見えるみたいだ。


チビ、チビだしなぁ。

超弱そうだもんな。


鳥系モンスターには特に狙われてたな。

自分で食べる用では無いからここでの殺意は無いんだ。

巣にいるであろう雛の為の生き餌だもんな。

攫っていくにはうってつけの魅力的な餌に映るみたいだ。


まあ、上にだけ気を付けておけば割と何とかなるくらいの被害だから思ったよりチビに気を使わなくて良いのは有り難かったけど。


バディの上に乗せとけば滑空してきた魔物は全てバディの格好の餌になってたしな。

自ら獲物が食べられに来る入れ食い状態に一番喜んだのは確実にバディ達だったのは間違いない。

いつに無く皆機嫌が良かったからな!


ここまでは凄いお人好しでちょっと変な幼児位の認識だったんだが。

だから道中も親しみを込めてチビ呼びしていた訳だし。


でもなぁ・・・只でさえ、自分の食糧を適正価格より安く物々交換してくれる相手に皆の好感度は爆上がりだった訳だが。


道中、変な植物がニョキっと生えたと思ったら口っぽい部分からくそたっかいお金でしか取引されない、でも摂取せざるを得ない塩が、大量に採れる様になるし・・・死の泉があるだけ再採集可能とかマジパねぇじゃん・・・これ、現実か?って思わず隣のホセの頬を抓って、殴られた・・・いてぇな・・・集団幻覚とかでは無さそうだ。

・・・それでも現実味はねーがな、ははっ。


そんなお伽話の中に出てくる様な道具?生き物?を簡単にこっちに寄越してくるミリアに・・・もう軽々しく“チビ“呼びなんて出来ねーよなぁ。


安く売ってもらうんだ!じゃねーんだよなぁ・・・逆にこっちが払いたいくらいだってのに!!




で、次は。

決してこっちは見ないでください、は通る訳ねーだろ。


あいつ空からの魔物の襲撃とか被害無かったからって、もう忘れてんじゃねーだろうなぁ・・・と呆れて見てたら。


何かすんごい、可愛らしい・・・微笑ましいってのか?な踊りが始まって・・・でも本人すんげぇ真面目腐った顔でやるもんだから、笑っちゃいけねーんじゃねーか真理と戦って腹筋が物凄く痛いんだが。


・・・アデル様とラカンは律儀に目を手で覆ってるなと思ってたんだが、すんごい指と指の間が開いててガン見なのもこっちを笑かしに来てんだよなぁ〜〜。


ほら、堪えきれなくて何人か目のプルプル震えてた奴が、今地面に沈んじまっただろーがよっ!!


・・・皆で笑いたいけど笑えない、何とも言えない空気の中でサイレントにわちゃわちゃしてたら。

滅多に降ることの無い雨が空からポツポツして来るじゃねーか・・・後で聞いたら雨を呼ぶ踊りだったって聞いて、ちゃんと説明しろよっ!ってなったけどな!?


実際雨乞いで雨が降るのを見るのは初めてだった・・・。

他国には巫女と呼ばれる特別な人間が居て、そいつらが祈れば雨が降る・・・な噂は流れて来てたけど、そんな奴らは当然国の宮奥深くに匿われてる訳で。

1度褒賞代わりに派遣を願ってみた事はあるが、鼻で嗤われて終わったって聞いたかな・・・。

まあ、そんな者が本当に居るなら国からは出さんだろうなとそれには納得したけどな。

ラカンも無理をする。


そのやり取りを多分何処かで聞いたのだろう。

自称巫女を名乗る女とその連れが襲撃?して来て、雨を降らせてやるから貢物を寄越せ、なんて言って来た事がある。

結局雨なんて1粒も降らせられずにそれでいて貢物が足りないからだと喚いて数日のタダ飯喰らいに飽き足らず、アデル様やラカンに1晩相手しろっ!とか宣った奴らは・・・勿論即切ってやったが。


何処からでも噂は立つ様で、裏ではよく言われていた陰口の“蛮族”が表立って言われ始めたのがこの時期からだった気がするかもな。


雨が降って、そこではしゃぎ回って・・・その頃にはもう勇者じゃねーなんて侮る奴はいなくなってたな・・・いや、別に貶めるような悪感情を持ってる様な奴は最初から1人も居なかったけどな?

巻き込まれ一般人って思ってる奴はたくさん居た。

寧ろ全員思ってただろ。

見た目そこらに居る村人、な見た目で幼女だしなぁ。


勇者ってすげーわ!!


・・・因みに俺は未だホセみたいに女神様っ!

なんて感じにはなってねーからな。

何人かそんな奴らを見かけるけど・・・流石にそれは言い過ぎだろってこん時はそう思ってたんだが。


・・・今は未だ、遠く無い未来にわからせられる日が来るなんて思ってもみないでいた。












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