第19話 ダンジョン(洞窟)攻略


 眩しい光に包まれて、体の浮きあがったような感覚がした。

目の前に見えていた遺跡の風景がぼやけていって、眩しい光が淡い光に変わったとき洞窟の入り口に僕達は立っていた。


 「着いたな……」

「無事、戻って来られて良かった……」

二人で肩を抱き合って喜んだ。レベルの低いダンジョンなはず……と油断した。ともかく、ジーンを危険にさらしたのは僕のせいだ。

 ジーンが戒めのためにダンジョンから持ち帰ったものは本物の宝石で、価値があるものだ。一緒にダンジョンへ入ってくれて、僕を守ってくれたお礼としてどのくらいの価値があるかは黙っていよう。


 「俺、家に帰って風呂に入るわ」

 お互いに全身を見てみるとかなり汚れていた。

「僕もそうする」

 ダンジョンのそばに入浴施設が必要だな……。地下二階の休憩所にも欲しいかも。


 「じゃあな、マオ。いい経験をさせてもらったよ。ありがとう」

そう言ってジーンは後ろ向きで手を振って帰っていった。

 「こちらこそ、ありがとう」

ジーンは将来、経験を積んで良い騎士になるだろう。幼馴染として応援する。

 ゆっくりとお風呂に入りたい。僕はダンジョンを振り返り、ふう……と息を吸ってから歩いて帰った。


 

 お風呂に入って体をきれいにして、急いでお昼のお惣菜を作り販売した。変わらず売れ行きが良い。それに僕の作ったお惣菜を食べると、調子が良いと言ってくれるのも嬉しかった。


「さすがに疲れた……」

お昼の販売と夕方の販売を終えて、夜ご飯を食べていると眠気が襲ってきた。子供のようにスプーンを持ったまま居眠りするわけにいかないので、急いでご飯を食べてまたお風呂に入ったりして眠りについた。


 チチチチ……と鳴く、鳥の鳴き声で目が覚めた。ぐっすり眠って疲れがとれた僕は、朝から出かける準備をした。

「村のおさやみんなに話へ行かないとな」 

村の人と一緒に、ダンジョンで村おこし的みたいなことをしたいと思っている。

 「じゃあ母さん。すまないけれど、村のみんなとお話ししてくるね!」

「みんなによろしくね」

 今日は話し合いがあるのでお惣菜を作った後、母に販売をお願いした。


 家を出てしばらく歩いていたら……。 

ピコピコ、ピココ! レベルアップのお知らせの音だ。いつもと違う音だ。

 

   ~◆ レベルアップ! ◆~


 ・料理レベル 20

 

 ・冒険者レベル 20(スタート時5)

 

 ・魔王 ////////  ←モザイクがあって見えない


   ~◆ 頑張りましょう ◆~

 

 「冒険者レベルが上がって嬉しいけど……。一番下の『魔王』のとこ、モザイクがあって何だかわからない――! こわっ!」

何? 何だろう? 焦る……! 


 「魔王様」

「ひゃっ!」


 いきなり声をかけられて驚いた。

「ミレーヌ……と、誰?」

 身長が二メートル近くある男性が、ミレーヌの隣にいた。高級そうなきちんとした服をきた、ちょっと強面な人だった。

 「初めまして、魔王様。魔界運営担当、サウス・ベイロンといいます」

お見知りおきを、と言って深々と僕に頭を下げた。


 「こちらこそよろしく……、って魔界運営担当!?」

ミレーヌと、サウスと名乗った魔の者はにっこりと笑った。サウスの笑い顔は少し怖かった。

 「こちら、わたくしの兄です。魔界の運営を担当してますの。リール村の人々に会う前、魔王様にぜひご挨拶を……と言ってましたので連れて来ました」


 「は、はあ……」

僕が頭の中で理解できないうちに、魔界運営担当のサウスに握手されていた。

 「村の人との交渉や、面倒な国とのやり取りはこちらにお任せください」

胸をトンと叩いて僕に言った。心強いけど……いいのかな?


 「わたくしの家は爵位を持ってまして、そちら国や貴族に顔が利きますからご安心してくださいませ」

 ミレーヌとお兄さんは貴族なんだ。初めて知った。同じ艶のある黒髪で、顔立ちもよく見れば似ている。

 「あ、では。僕はその辺のことは全くわからないのでお願いします……」

 力になってくれる人は多ければいい。――魔族だけど。

 「魔王様のお役に立てるなんて、光栄です」

お兄さんのサウスさんは僕の両手を包んで、感激したように言った。


 「いや、僕は魔王になんてならない。人間を滅ぼしたりしないから」

なんでこんな弱い僕を魔王と呼ぶのだろう。僕なんかより、サウスさんの方が絶対に強い。

 がっかりしただろうと、背の高いサウスさんを見上げた。


 「それでいいのです。争いになれば、人間と魔族の双方に犠牲が出ます。それを避けるため魔王様は……「お兄様」」

 サウスさんが話している途中で、ミレーヌが口をはさんだ。

 「お話は後ほど。魔王様が困ってしまいます」

サウスさんはそうだな……と言って、腕組みをした。途中だった話の続きが気になるけれど、聞けそうな雰囲気じゃなかった。


 「話し合いのお時間が迫ってますわ。急ぎましょう。魔王様、お兄様」


 村の真ん中あたりにある二階建ての集会場に着くと、村の長や村の人達がお茶を飲んだりして、にぎやかに話をしていた。

 「お待たせしました!」

 僕達が中に入っていくと、見慣れぬサウスさんやミレーヌを見てざわついた。サウスさんが村の長に、名刺のようなものと立派な書状を渡して挨拶すると村の長が顔色を変えた。


 「お待ちしてました。皆の者も、この方達に失礼のないように……!」

いつもにこやかな村の長が、真剣な顔でみんなに話したので村の皆にも緊張が走った。

 

 「そんなに静かになさらなくても、大丈夫ですわ」

ミレーヌがにこやかに微笑んで、村の皆に話しかけた。すると村の人達は緊張が解けたのか、椅子に座ってくださいと二人に言った。

 「マオはこちらへ」

 村の長に呼ばれて僕は、長の隣に座った。


 「えっと……。僕が作ったお菓子を持ってきました。皆さんで食べながら、村のために話をしていきましょう」

 僕は家を出る前に作って持ってきたお菓子をお皿に出した。

 「これは……? 初めて見るお菓子だ」


 味は、リンゴ、オレンジ、ぶどう。果実を絞ったり、ジュースに加工されたものを使った。揺らすとプルプルと揺れて面白い。ホールケーキくらいの作ったので、切り分けて皆に配った。

「どうぞ食べてみてください」

僕が勧めると皆が不思議そうに、手に取って口に入れた。

 

 おそるおそる皆が僕の作ったお菓子を食べた。僕は皆の口に合うか心配だった。

 「美味しい! 不思議なプルプル食感ね?」

「子供も好きそう!」


 僕が作って皆に食べてもらったのは、『ゼリー』だった。

この間、ハリマさんが仕入れてきたゼラチンを買ったので試しに作ってみた。

「これは美味しいね!」

 「初めて食べた!」

 良かった。好評みたい。


 「――ではそろそろお話を始めます。ダンジョン運営について」



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