3話 両親

次は誰にしよう。

そういえば、最近、両親が私のことをやることなすこと文句を言ってくる。

本当に邪魔。そもそも、この体の親で、私の親じゃないし。


私だって、体は学生とはいえ、長い間生きているんだから。

自分で考え、判断し、好きなように生きたい。

それを、女だからとか、まだ大人じゃないからって、ダメだ、ダメといつも言う。


本当にうざいんだよね。女性が成人になるのは18歳だっけ。

あと1年ぐらいじゃないの。

それなのに、そんなに私のことを拘束しないで欲しい。


だいたい、あんたらって、そんなに偉いんだっけ?

お父さんの会社に行ったことはないけど、会社から電話がくると謝ってばかり。

本当にみっともない。


親だからって、それだけで私を支配し、馬鹿にするのはやめて欲しい。

私も1人の人間としてプライバシーもある。


私は一人っ子なんだけど、そのせいか、私に期待を押し付けるのもやめて欲しい。

どうだっていいじゃない。今どき、生き方は多様なんだから。

 

そう、次は両親だ。

両親が死んでも、私が殺したことにならなければ、この家は私に相続されるんだろう。

生命保険をかけているらしいから、当面は生きていけそう。


お金さえあれば大学に入れるし、卒業して働けば生きていける。


アプリに両親の名前を書くと、いつものように黒い空間に吸い込まれる。

そこを出ると別の風景が見えた。どこだろう。


ここは、電車のホームで、両親と一緒に立っていた。

こんな明るいホームなのに、私たち家族以外に誰もいない。


でも、電車はひっきりなしに来る。

車内にはだれもいないし、乗ったり、降りたりする人が全くいないのに。


電車の中は、これまでの殺人とはかけ離れたように明るい蛍光灯で照らされている。

誰もいない車両なのに。


「翠、お前、なんで、こんな時間まで外で遊んでるんだ。だいたい、まだ未成年の女なんだから、夜10時になっても家に帰ってこないなんて、おかしいだろう。」

「そうよ。節操というものを考えなさい。」

「あなた達だって、外にいるじゃない。」

「お父さんとお母さんは大人だし、仲良く一緒に飲んでたんだ。夫婦円満でいいだろう。お前は、まだ子供なんだからダメだと言ってるんだ。」


また、私のことを子供だからって拘束してくる。

だいたい、節操ってなによ。

今どき、毎日、夜10時に家に帰る女子高生なんているのかしら。

昭和じゃあるまいし。


しかも、お酒に酔って、ベタベタしている親なんて見たくなかった。

2人は酔っ払っているのか、だいぶふらついている。

息も酒くさい。


お母さんが、お父さんにキスをしようと顔を近づけた。

本当に気持ち悪い。

だから、許せなくなって、2人を強く押したの。


2人は、そんなことをされるとは微塵も思っていなかったみたい。

酔っ払っていたからか、そのままホームから落ち、そこに来た電車に轢かれてしまった。


轢かれる瞬間は、コマ送りのように見える。

父親は、なんでお前からと驚いたように私を見つめ、電車に飛ばされていった。

お母さんも頭から落ち、スカートの中が丸見えで電車に轢かれる。


私は、いつものようにベッドで寝ていて、警察からの電話で目が覚めた。

両親が酔っ払ってホームから落ち、電車に轢かれたと電話で伝えられた。


警察は、あまりに私の周りで事故が起きるもんだから、少し疑っていたみたい。

でも、疑うことはできなかったと思う。

事故からそれ程時間が経っていないのに、事故現場から遠い家にいたことは事実だから。


その他の事件も、家にいたという証言を覆すほどの証拠もでてこなかったし。

だから、それ以上、何か言われることもなかった。

女子高生1人で、成人男性も含む人たちを殺害なんてあり得ないとも思ったのかもしれない。


また、両親の事故も、周りに大勢人がいるなかで証言が多数あったし。

酔っ払って足がふらつき、2人でホームから落ちて行ったという。

殺人とは見えなかったという状況もあった。


保険会社は自殺とも言い切れず、不幸の事故として多額の保険金を支払ってくれた。

うるさい両親がいなくなり、お金は使いきれないぐらい手元にある。

これって、ラッキーと言う言葉以外に、何があるのかしら。

そもそも、本当の自分の親じゃないし。


なんか、親戚と言う人が保険金目当てで群がってきたわ。

でも、これまで何もしてくれずに、会ったこともない人には1円も渡さないと強く言った。

ケチだといって去っていったけど、ケチなんて言われる筋合いはない。


そしたら、それ以上、誰からも連絡がこなくなったわ。

やっぱり、心情に流されずに、冷静な対応が必要ね。

私は、これから生きていかなければならないの。


半年ぐらいしたころ、クラスメートの3人が休み時間に話している会話が耳に入ってきた。


「ねえ、ねえ、殺人ゲームアプリって知ってる。話題になっているよね。」

「聞いたことある。ゲームで罪を負わずに人を殺せるってやつでしょう。」

「なんか、アプリという感じじゃなくて、この世じゃない世界に吸い込まれて、そこで人を殺すらしいよ。」

「そうそう。あり得ないよね。でも、結構、いろいろなところで話題になってるらしい。実際に、人を殺したっていう人もいるみたいよ。」

「でもさ、規約で、5人以上殺すと一番大切なものをもらうって書いてあるんだって。」

「5人って、気前がいいじゃん。普通は1人殺せばというんじゃない。」

「でも、一番大切なものって何かしら。命とか?」

「噂だと、子供とか、お金とか、地位とか奪われたらしいよ。」

「怖い。」

「まあ、噂だし。本気にしてるんじゃないわよ。都市伝説よね。」


規約があったんだ。無料アプリとは確認したけど、それ以上は読まないし。

あと2人で5人目になるけど、私には大切なものなんてないし、まあ別にいいか。

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