Stay Alive

歌ミン☆ギュ

Prolog

Say.1. 0から1へ、100年期約の大前提。

Stay Alive. Say.1. 0から1へ、100年期約の大前提。





遠い闇の中からふと誰かのささやきが聞こえてきた。


「ようやく完成できた....。」


囁きのそばに宿るのは欠片。

青い、光の欠片。

そこにある者、手のひらを整列に集め、大切に受け止めた。

そうすると欠片から流れた光、そこに溜まり小さな湖を成す。

それでもその小さな手、輝きを受け止めるには足りなくて、あふれる光は粗い手の隙間から零れ落ち、闇の中に溶け込む。

その者、献上するように欠片の湖を頭上に捧げると、そこにある世界、ふと光を飲み込み眠る。

訪れたのは目を閉じた世界、身を委ね眠ろうとすると、到来するのは昇華の時。

欠片は星となり、遠い彼方で光始める。

それは遠い道標。

聖光に導かれ腕を広げると、光は波となり天空は揺れる。

天空を飾れ、光の波。

遥かオーロラの道。

道は重なり、やがてその波で蒼穹を溶かし大空を開いた。

一つ。

二つ。

数えるたびに大空は広がる、星のように多く、遠く、遠い彼方まで。

一つは十となり、やがて千となり、次の瞬間数えきれない数となって広がっていく。

その日、突然全世界を囲む天空の大空洞。

見上げる者たちは指を合わせて数えてみるが、その小さな十本の指を折り畳み握った手の中には無意味さだけが残されていた。

だから、誰もが手を下ろし、ただそれを見上げるしかなかった。

誰かは遥かな空の大陸で。

誰かは星々が眠る深海の中で。

誰かはガラス破片の砂漠の真ん中で…。

だが彼らは、いや、きっと誰もがまだ知らずにいた。

その日、突如として世界を覆った大空洞が、何を呼び起こそうとしているのかを、何を産もうとしているのかを…。

知らないまま、誰もがそれぞれの場所で、もうすぐそこから生まれることになる数え切れないほどの冒険と物語の誕生を、ただただ見守っていた。

その時、遥かな闇の中で、その者は誰かに手を差し伸べるように天高く手を伸ばし、再びそっとささやき始めた。


「これで七十年の待ちは終わりを迎える」


「さあ来るがいい、懐かしき世界の放浪者たちよ、哀れなる月なき世界の住人たちよ」


「門は既に開いている、胸を開きその願いを叶え給え」


「そなたらの願いが叶う時、私もまた失った月を取り戻し、抱いてきた願いを叶えることになるだろう」


「阻む簒奪者よ」


「来い」


「そなたが被りし救世の仮面、壊す時が来たなり」


「ここは決着の地」


「長き因縁を断ち切り、そなたに奪われた世界を取り戻そ」


「歪んだ時計の針を崩し、ここから新たな70年を始めよう」


その言葉を最後に、その者その荒くて小さな手で静かに虚空を掴んだ。

溶け込むささやきとともに、大空洞はどんどんと広がる。

天を照らし、波をまとった光は、空洞を越え、月なき空とその柔らかなドレスを分かち合った。

そして、それを見上げているすべての者たちの端末に、ほのかな光とともに、見たことのないアプリケーションが溶け込んだ。

ただひたすら美しい、月のない空の下、その光景は儚げな老女の紫の瞳にも、静かに伝わっていた。

そうやって何千、何万、もしかすると何十億もの人々の瞳に、この日のオーロラは刻まれた。

それでもオーロラは続く。

そしてその遠い彼方で、月を背にした謎の男性は、オーロラに染まる世界を静かに見下ろしていた。


■□■


ピッ ピッ ピッ――


光の届かない暗い部屋、そこはまるで深海のようで、かすかな青い光に包まれ、ただひたさら静かだった。

そこに沈み、沈没したかのような医療装置につながった青年。

青年はその静かな心拍音で、深い沈黙を静かに沈めていた。

青年の体、特に臓器はこの医療装置と複雑に結びついて、まるで周囲に散らばったこの複雑な機械たちが青年の臓器の役割を代わりに果たしているかのような印象を与えた。

しかしそれはひどく異質で息苦しい形で、青年はまるで縛られたかのように微動もせず、ただそこに沈んでいた。

呼吸さえも機械装置なしでは不可能な息苦しい世界。

だけど皮肉なことに、その機械装置だけがこの暗い深海に光を運んでくれていた。

これは月が消えた、少し遠い未来の物語。

空想と現実の境界が崩れた世界を生きる青年の物語。


-Say.1.0から1へ、100年期約の大前提. END.

-Next say.病気.

-To be continued....



☆☆☆

後記.

☆☆☆

今週もお疲れ様でした。 ごゆっくり

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