第23話

毎年こいつの誕生日を彩る、小さい花。

街中に溢れる独特の香りを思い出す。



直『あの匂いのおかげで、いっつもプレゼントが楽しみになっちゃうんだよね』

藤「え、俺らにも?何を期待してんだ?」

直『あはは』



眉毛も目尻も下げて笑うその表情は、いつもはまっすぐ俺に向けられているものだ。

でも今は運転中だから、俺が見つめるのは横顔だけ。実はちょっと貴重な瞬間。


おまえは知らない。俺がこんな些細なことで、喜んだり哀しんだりしてるってこと。



直『ていうか言ったじゃん、こないだ』

藤「えっ?」

直『朝顔っつったじゃん。ラジオで』

藤「…朝顔?」



―――あ。そういえば…?



藤「…何だっけ」



真顔でそう言う俺に、チャマはだいぶガクッとしたようだ。



直『だからぁ、俺的には藤くんを花に例えたら朝顔なの!理由は、俺が朝顔も藤くんも好きだから!』

藤「あーぁ、はいはい。そっか。そういや言ってたな、そんなこと」

直『そうだよ、好きなんだよ。忘れないでよねー』



おまえが俺に向けてくれる愛情は、そこに恋情がなくても嬉しい。…そこに恋情がないから、せつない。

(“好き”発言を忘れてた分際で言えることでもないけどさ)

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