第13話

増「ていうかさ、秀ちゃんもそうだけど、チャマも昨日疲れてたっぽいよね。大丈夫?2人とも少し休んだ方がいいんじゃない?」

直『んー…大丈夫だと思う…けどなぁ』

増「藤原も、」

直『えっ?』



その名前が出た途端、ゲンキンに反応しちゃう俺。



増「藤原だって、心配してたし。まぁあいつはチャマのことばっかりだったけど」

直『…ごめん』

増「なんで秀ちゃんが謝るの」



そう言って笑うヒロは、なんだか少しさみしそうだった。

疎外感というほどではないにせよ、どこか変な感じは受けてるんだろう。


俺たちにとって当たり前だったはずの空気が、かつてない形で歪みを見せている。

そりゃそうだ、4人中2人の“人が違う”わけだから。



増「ねぇねぇ、これ美味しいね。どうやって作るの?俺にも教えてよ」

直『…おう』



ありあわせの材料で作った、何の変哲もないトマトソーススパゲティとサラダ。



増「ていうか秀ちゃんてさ、滅多に料理してくれないくせに、作るとウマイよね~!」



ころころ話題と表情が変わるヒロにつられて、俺も笑う。



直『じゃあ仕事行く前に、2人でまた何か作ろうぜ。なんなら買い出しも行くか?』

増「うん!」






その後、ヒロからこんな話を聞いた。

俺の知らない、藤くんの言葉を。



―――昨日、秀ちゃんとチャマが2人で話してる間、藤原のやつずっとソワソワしてたんだよ。


俺が「そんな心配することないんじゃない?」とか言っても、「いや、今日のチャマは絶対におかしい」って譲らなかったんだ。


「あいつ本当にヤバイ時は、俺にも言わないで全部1人で抱え込もうとするんだ」って。


「しかも、自分がそうなってるってことすら自覚してないことがあるから、そういう時は俺が言ってやらなきゃダメなんだ」って。


愛されてるね、チャマのやつ。

それに比べると、俺は頼りない恋人でごめんね?



…そう言って肩に寄っかかってくるヒロが重たくて、『ばーか、重いよ』と笑った。

『おまえはそれでいいんじゃないの』と言いながら、藤くんに会いたい欲望と戦う。




「チャマ」と呼ぶ声が聞きたくて。

俺の目を見てほしくて。

…会いたくて。




―――藤くん…

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