プロローグ

第1話

再会の場は、放課後の中学校だった。


入学直後の4月。

沈みかけの西日が差し込む、誰もいないはずの教室で。






忘れ物を取りに来た俺は、その姿を目にするより先に、ギターの音を聞いた。


廊下に流れる歌声。

開けっぱなしの扉から見えたのは、学ランをはおった細身の背中。


彼は、窓の方に向けた椅子に座り、ギターを抱えて歌っていた。


その直後、カタンと物音を立ててしまった俺に気づき、ふわりとこっちを見て―――

薄く笑うと、こう言ったんだ。



「ドラクエ好き?」



はい?

あまりにも脈絡がない、場にそぐわない質問。

一瞬何を聞かれたかわからないほど混乱した。


と思ったら、次の瞬間、彼はギターでドラクエのテーマ曲を弾き始めた。

合間に、呪文を唱える時の“ティロリロリロ”っていう音も混ぜ込んでくる。


よくわかんないけど、楽譜も見ないでこんなふうに弾けるなんて、すごいな。

そう思って、音に身を委ねた。

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