第13話 僕は小説でも肝心なシーンが上手く書けない

 隣の空き教室に行くと、高橋さんが待っていた。

 鞄からレース柄の可愛い包装でラッピングされたものを取り出していた。

「これアゲるわ。この間、生徒会の仕事を手伝ってくれたお礼だからねっ」


「ありがとう、高橋さん。家で開けさせてもらうよ」

 僕は包みを手に出口に向かおうとすると、背中から声が掛けられた。


「ここで食べちゃってくれない?」


 僕は家で、ゆっくり食べたかったけど仕方ない。

 綺麗に包まれた包装を、丁寧に解いた。

 中には結構手の込んだ、手作りのチョコレートが入っていた。

「それじゃあ、戴きます」

 僕は高橋さんの顔を見ながら、一口大のチョコレートを一粒頬張った。


「どう?」

 主語がない質問だ。

 まぁチョコに関してなのは、間違いないのだろうが。


「うん。カカオ75%くらいのビターチョコかな。中に少量のラム酒が混ぜられているけど、カカオ本来の風味が生かされてて、絶妙なバランスだと思うよ」

 陰キャは、日々知識の習得を怠らない。

 いざという時に役立つのが、地道に蓄積した知識だと信じているからだ。


「それだけ? もっと……こう、何かない?」


(ん? かなり高評価なコメントのつもりだったけど、まだ足りないのかな?)


「きっとお店に出せるレベルだと思うよ」

 僕にとっては、最上級の誉め言葉だ。


「高評価をくれて、嬉しいわ」

はぁ――っ……。

 高橋さんは一息溜め息を吐くと、何故か? 残念な者を見る目をしていた。


 僕は一体何を間違えたというんだ?

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