第20話 元町ダンジョン散歩 ③(第三者視点あり)
>>配信者のにゃむこSide
Why、なぜ、ジャバニーズピープル、こいつが此処に居る。
そして、私のパーティー申請を受け入れた!いつもは、三ノ宮ダンジョンが主な狩場のハズなのに……。
「おひさぶりにゃ、仁美ちゃん!元気そうで何よりにゃ」
『にゃむこさんも元気そうで何よりですわ』
そう言いながら、こいつは私にがっちりと抱き着いてきた。
≪これは、血塗れ美少女が笑顔で抱き着くカワイイ(錯乱)≫
≪これ、別視点で見たら捕食シーンで草ww≫
≪にゃーこの顔が引き攣ってて草ww≫
コメントの猫民は言いたいことを言ってくれている。
私はというと前に三ノ宮で腹を抉られた時の記憶がフラッシュバックする。
そもそも、こいつは、
「それにしても、仁美ちゃんはどうして此処に来たのかにゃ?」
『50層のボスを倒すためですわ!そして、Dブランド楽器を手に入れる事ですわ』
「へぇー、仁美ちゃんもDブランドの楽器を手に入れる予定なんだにゃー」
『っという事はにゃむこさんもDブランドを手に入れる予定なのですね』
やはりこいつも、今度の音楽番組に呼ばれているんだな。マネージャーが出演者の一人を私に教えない訳だ。
こいつを本番で出して、私に絶望顔をさせて視聴率を稼ぐ気なのだ。
「あ、お姉さんは今日はDブランドを手に入れなくてもよいにゃ、仁美ちゃんだけで50層のボスを倒してね!パーティー申請を受けてくれたのは嬉しいけど、お姉さんも戦うと足手まといになるからパーティーは解散するね」
そう言いながらステータスからパーティーの項目で【解散】を選択するが、【パーティー結成後、24時間は解散できません】と表示された。
これは絶望、もう、絶望である。こいつと24時間パーティーを組むよりも、繁殖期のゴブリンとオークの集落で全裸で24時間過ごした方がまだ、ましである。
『にゃむこさん、残念ながら【解散】は出来ないようですね』
こいつは抱き着いたまま、笑顔を私に見せる。
「仁美ちゃん、やっぱり急なパーティー結成は躰に悪いというからさぁ」
『大丈夫です、躰の調子が悪くなったら、回復させるので言ってください!』
こいつが笑みを浮かべ両手を広げ、私を開放した瞬間に、私は逃げた。
配信がどうのとか人気がどうのとか言ってられない、私は生きる事を大事にしたい。そう思いながら、40層へ向けて走り始めた時。
『ホーリチェーン』
っと声がし、突如として足元が引っ張られたと思いきや地面に叩きつけられた。
『あーあー、大人しくしていれば、手荒なことをせずに済んだのに』
『にゃむこお姉さんが悪いんだよな』
私の両足に絡まる光の鎖を持つは、瞳孔を開かせ狂気の笑顔をみせる奴がいた。
『じゃ、行こうか!』
奴はそのまま、私を引きずり50層の扉を開けようとしている。
私も全力で両手で地面を引っ張るがまるで水を掻くかのように引っ張られる。
「この間の記者会見はゴメンね、だから許して!」
「誰か!助けて!イヤだ!」
「ママ、パパ、助けて!イヤだ行きたくない!」
「まだ、死にたくない!」
何を言っているか分からないし、泣きながら叫ぶが誰も来ない。
颯爽と王子様役のおじさんが来るなんてのはナロウ小説の世界でしかこないのは分かる、だが躰が!心が叫ぶのだ!誰か助けてと!このまま行くとロクな事にならないというのが私の直観で分かるのだ。
≪出来高高い≫
≪もう、これ、殿堂入りだろ≫
≪視聴者うなぎ登り過ぎて草ww≫
そしてボス部屋の扉に向かう途中で引きずられながら猫民のコメントを見て、悲しみよりも。怒りが溢れてきた、そうか悲しみが反転すると怒りになるというのはこういう事なのか……。
やがて、ボス部屋に入り扉が入る直前に私は猫民にこう言ってやることにした。
「お前ら、絶対に覚えててろよ!絶対に戻ってくるからな!」
なんでそんな事を言ったのか、人差し指で空虚な空間を指さしたのは分からない。
ただ、言いたかった、誰かに誰でもよかった。
やがて、ボス部屋の扉が完全にしまり、私の足元の鎖は外された。
もう、逃げられないのだ……。
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