第16話 元町ダンジョン散歩 ①
>>仁美Side
今日、私は神戸元町のダンジョンに来ている。DチューブとD呟いたーを連動させ、配信用の魔道ドローンに魔力を流すと自動的に空中に浮遊を開始する。
「皆様、ごきげんよう!本日から私もダンジョン配信なる物をやってみる事にいたしました。慣れない所が多々ございますが、ご容赦のほどよろしくお願いいたします。」
挨拶をしながら腕についたデバイスの状況を見ると最初は100人程の視聴者があっという間に1万人に達しようとしている。月曜日の夕方なのに、世の中は暇人しかいないのかと私は思わずため息を着きたくなる。
(さて、聖女よ出番じゃ、交代じゃ)
(まってたわよ、久しぶりにやってやるわよ)
私がワタシに替わり、全身に魔力を伝達させながら、周囲を索敵する。
どうやら周りには、スライムとか雑魚モンスターしか居ないようだ。
「それでは、皆さま、とりあえず、出会う敵を皆殺しにしていきたいと思いますわ」
笑顔で挨拶をきめると身体強化をさせるとダンジョンへ潜っていく。
「スライムは、プチっと潰しますわ」
「ウルフドッグは、グシャっと粉砕ですわ」
「キラーウサギは、シュッとミンチですわ」
「お喋り猫は、もみじおろしで地面を紅く塗りますわ」
≪……≫
≪……≫
≪……≫
どうやら、コメントが止まっているようね。
一応、みんなに呼び掛けてみるか。
「皆様、コメント機能が止まっていますが機材に不備がありますでしょうか?」
≪いや、こう、何というか≫
≪俺たちは何を見せられているのだろうか?≫
≪カワイイ等身大ドールが、モンスターを出会い頭にブチ殺している所ですかね≫
≪仁美ちゃん、とりあえず、自分の今の姿を見て見て!≫
コメントを見て、私は流れている川で自分の姿を見てみると、頭から足まで血塗れのカワイイ美少女が立っている。
「あぁ、なんと美しい私、これ以上の芸術品は存在しないでしょうね。彼等の血肉は私を強くするのです。戦いは綺麗でも、美しくもない。あるのは、血と汗の涙で出来上がった、栄光へのレッドカーペット」
戦いで興奮していたのか思わず、口から自分への賛美が出てしまう。
≪ひぇ、全身に鳥肌がたった≫
≪綺麗に美しく戦う系の配信者に喧嘩を売る、素材が美しい配信者≫
≪でも、良いな、美少女が血まみれで、ふぅ≫
≪かまわん、進めたまえ、ふぅ≫
一部の人達には刺さっているようである。全員に満遍なく刺さるのは八方美人で敵を作りやすいが、コアなファンを持つことで信者を獲得するのが聖女であるワタシの戦いかた。
しばらく、歩いていると先の方から複数の怒号が聞こえて来た。行ってみると、2組の5人グループが今にも争いになりそうな剣呑な雰囲気だった。
「ごきげんよう、何か問題でもありましたか?」
私が挨拶をすると、一斉に彼らは私を見ると争いを辞め武器を捨てた。
どうやら、彼等にも私の美しさに刺さり見惚れているようです。
「喧嘩の理由は分かりませんが、配信の為、先を通させていただきます。失礼いたします」
彼等の間を抜ける次の階層の階段に降りる時に背後から何かが倒れる音がしたが、喧嘩が始まったのかと思いながら、私は気にせず次の階に降りることにした。
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