第5話 一方少女の方は

>>仁美Side

 はぁ……全身が痛い。

そもそも、聖女が『身代わりダミー』なんてスキルを使うからである。


(聖女っていえば普通は、回復ヒールとか得意じゃないのか?」)

(あ゛、私は回復ヒールとか苦手だわ、私の専門は死んだ兵士を生き返らせる死者蘇生リヴァイブの方が得意だわ)

死者蘇生リヴァイブとか死霊媒師リッチとかが得意分野では無いか?お前本当に聖女か?)

(だって、魔族が兵士を殺しまくるから、キズ●●がある兵士が少なかったよ)

(魔王として、返す言葉がない)


 っと脳内で会話をしているとチンっと音がしエレベータが止まり、待っていた社長秘書の女性に案内され社長室に入っていった。


 社長室には金髪アロハ服を着た、よくNTR同人に出て来る十代の男を五十代にした感じの男が笑顔で座っていた。


『仁美ちゃん、大丈夫?かなり、顔色が悪いけど』

「ハイ、大丈夫です」


 魔王の私は人間界で学んだのだ、大丈夫で無くても大丈夫という事が美徳であるということを……。

椅子から立ち上がり、男は私の前に立ち膝を付き目線を合わせて来て


『本当に?』


 っと聞いてくる。

 周りから見ると五十代のイケメンNTR金髪おじさんがドル箱の少女に気を使っている様に見えるが、私からしてみればNTR金髪おじさんが壮年の魔王のおじさんに向かい合っている様なものである。


 ちなみに、私にそのケは無いから安心して欲しい。


「ハイ、大丈夫です」

『見えないけど、君がそういうならそうなのだろう……』

「今日、お呼びの理由は、何でしょうか?」


 勿論知っているが、ここは純粋無垢な少女を演じる為に社長の話に合わせる事が重要だと偉大な魔王である私は理解をしているので知らないふりをする。


『君はSNSとかテレビはやらないタイプかい?純粋な事は良い事だけど、ニュースは見ても良いかもね?これだよこれ』


 社長が見せて来たのは、この間の助けた少女の様子が切り抜かれた新聞とその他のニュースメディアの映像である。


『君のした事は、素晴らしい人助けである事であるが、世間は理解が出来ていない。だからこそ、世間には理解させる必要がある。どうだろうか?3日後にその少女との会社と共に記者会見を行うので参加して貰えないか?君は座っているだけで良いから、後はマネージャーが全て受け答えしてくれるから問題ないと思う』


 これは、私に「ハイかYES」以外の選択肢が無い、選択肢である。

中学生の子供にこの場で選択をさせる芸能界の社長はハッキリ言って屑である。

だが、この芸能界という魔界で生き残るには首を縦に振るしかないのである。


 勿論、私は


「ハイ、喜んで参加させていただきます」


 と答えるしかないのである。

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