第10話

 僕達の国の整備班は終夜、時間を問わず整備を続けた。

 あるイスラエル兵は言った。

「我々には諸君らの行動原理が理解出来ない。世界中の戦場に出っ張って殺人行為を行い、挙げ句同胞たる同じ列島の人間を殺す。諸君らは一体何なんだ」

 彼女はこう答えた。

「日本人です。それ以上でも、それ以下でもない」

 そう返されたイスラエル兵は、他にも何か言を発しようと試みるが、挫折した。

 僕は彼女にこう提案する。

「僕が向こうの相手をします。編隊長は祖国へお帰り下さい」

「それは駄目。祖国に必要なのはあなたであって、私ではない」

「そんなわけ」

「ある。ねえ――新谷くん。今後、空戦はどうなっていくと思う?」

「誘導兵器がさらに発達します。爆撃も、誘導で済ませるようになるでしょう」

「そうなった時。戦闘技巧に優れた操縦士が必要になると思う?」

「それは」

「ないの。私みたいな人間も。多分、岩崎もね。私達はサーカスの芸以上の評価を得られなくなって、撃墜数は共有品になって、記録すらされなくなる。そういう時代が来る」

 そうなったら、彼女は言う。

「必要なのは、あなたのような平和な社会で生きる技術を持つ人なの」

「……ならば、せめて。あなたの戦いを見守らせて下さい」

 彼女は虚を突かれたような顔をした。しかし、そうしてすぐ答えを返す。

「いいよ。見守ってて……でも、手出しはしないでね」

 そう言って、彼女は微笑んだ。この笑みが、僕が見た彼女の最後の表情になるかもしれないのだ、と考えると僕は――たまらなく、怖かった。

「負けないで下さいね」

 彼女は答える。

「勿論」

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