第23話 ローガンと元冒険者の奴隷

 行商人のローガンが帰って一か月半、魔魚の工場では現在、村で食べる分だけが製造されている。その分の余った人員はスライム手袋の材料集めと製造をやって貰っています。だってこちらは痛む物じゃないからね……。


「マリアお嬢様、魔魚の工場は何時頃から再開しましょうか?」


「そうね……、ローガンさんが来るのは早くても来月ぐらいじゃないかしら。だから燻製の方はもうそろそろ良いんじゃない。燻製の方はひと月半持つし、日干しの方も三週間は持つのが分かってるからね」


 ただこれも私の魔法を使えばこれ以上日持ちをさせる事も出来る。何かの為に使えるだろうと創造魔法で保存魔法を開発してる。


「そうですね。スライム手袋の方も在庫は充分にありますから暫く製造は止めても良いぐらいです」


 スライム手袋の方もあれから改良が色々されて、種類も増えたし丈夫にも成った。その一つが編み物で作った手袋にスライム液を染み込ました手袋を作ったのです。これは防水ではないのですがスライム液が固まる時に糸自体を丈夫にして凹凸もあるので滑り難いスライム手袋に成りました。


「エマ、スライム手袋の評判も良いんでしょ?」


「はい、村の女集には特に良いですね。水仕事が多いですから手荒れが少なくなったと言っていますよ」


 そうよね……、畑仕事に水仕事なんてやってたら、女性の手なんてボロボロになるわよね。ん! それならハンドクリームなんてどうなんだろう? 私の得意分野だから作れるよ。う~~ん、でもな~~、今はそんな物作ってる暇ないよな……。まして人手が足りない。


 そんな事をエマと話していたら、マーサがいきなりノックもせずに私の部屋に飛び込んで来た。


「マリア様、大変です商隊がやって来ました!」


「商隊ってローガンさんが来たという事?」


「それはそうなんですが、数が凄いんですよ! 馬車が十台も来てるんです」


 この小さな村に馬車が十台の商隊が来るなんて確かにマーサじゃないけど驚くわね。一体どういう事かしら、馬車の数もそうだけど、来るのが早過ぎない? 異常な状態だけど兎に角来たものはしょうがないし、事情を確認する為にも私とエマは商隊を見に行くことにした。


「これはこれはマリア様、わざわざお出で下さりありがとうございます。後程こちらからご挨拶にお伺いするつもりでしたのに……」


「ローガンさん、それは良いけど、この商隊はどういう事?」


「これは奴隷をお連れしたのと、仕入れの為です」


「奴隷は十人程度じゃなかったかしら? それに仕入れの為に十台は多過ぎるでしょ」


「奴隷は二十人に増やしました。これから必要になると思いましたので。それと仕入れは本当にこのぐらい必要なんですよ……」


 この後ローガンさんが話してくれた内容に私はびっくりした。先ずは燻製魔魚と日干し魔魚は飛ぶように売れ、今では問い合わせが殺到してるらしい。次の入荷は何時なんだと……。それにスライム手袋も評判が良く、こちらも問い合わせが来ているとの事。


 前回の訪問時でもこの村が最終地点だったから、結構な量を仕入れて帰ったのに、それが直ぐに売れてしまったと言うのだから、ローガンさんの今回の意気込みも納得だ。それに合せてローガンさんが考えたのが奴隷の数を増やす事。こちらが無理な量を発注するのだから、人手も多い方が良いだろうと考えたらしい。


「しかし、こんなに早く来られても今はそんなに生産していませんよ」


「それは待ちますからご安心を。出来るまで今回はこの村に滞在する予定ですから」


「ですが、この村には宿屋がありません」


「そこはご心配なく行商人ですからテントで問題ないです」


 テントで良いと言ってもね。流石にこの馬車の台数分の商品を作るのには早くても一週間以上掛かる。魔魚の捕獲用に今は小船と投網も用意出来てるから、以前に比べたら捕獲は早いから後は捌いたり、加工処理の方だけなんだけど、それでもね……。


 それに奴隷の人の人数も増えてるからそれも困るのよ。最初の予定では十人だったから、十人ように宿舎は用意してるんだけど、その倍ではね……。どうしよう? ローガンさんもそれぐらいは考えているだろうから当然テントは用意してるんだろうが、そこでの寝泊まりでは体がしんどいよね。当然昼間は働かせるつもりで連れて来てるんだろうから……。


「マーサ、ペロ爺ちゃんを呼んで来て。それと書くものも持って来て」


「分かりました」


「ローガンさん、取り敢えずその奴隷の人達を紹介してくれますか?」


「そうですね。では先ずは護衛としての元冒険者から……」


 ローガンさんが先ず初めに紹介した、元冒険者の奴隷はなんと全員が女性。それも元B級で同じパーティーのメンバー。なんでもパーティーのメンバーが依頼中に大怪我をおってその治療費を払うのに急遽借金をしたのが運の付きで、そこが悪徳金貸しと繋がっている治療院で結局借金が返せず奴隷に成るしかなかったらしい。


 この世界の治癒魔法は貴重で教会や治療院で使われているらしいが、教会は何処にでもある訳ではないので、急遽の時は治療院を頼るしかない。まぁそうなれば悪徳治療院に当る時もあるから今回のような事になるケースもある。


 この世界、ポーションもあるのはあるんだけど、性能がそこまで良くないらしいのよね。だから大怪我などの時は治癒魔法の方が重宝されている。


 これってハンドクリーム同様、私の得意分野じゃない。このポーションを改良出来たらみんなの為に成るんじゃないかな。これは早急に研究に取り掛からないといけないわね。そうすれば悪徳治療院も潰れて行くでしょう……。


「それはお気の毒に……」


「マリア様、でもこの人達は運の良い方です。ここで働けるんですから。普通ならもっと過酷な環境で働く事もありますからね」


 今回、奴隷を雇う事にしたので、この国の奴隷制度について勉強したんだけど、確かにローガンさんの言うように買われる所によっては過酷な環境もあるらしい。衣食住は保証しなくてはいけないというルールはあるが、それのラインまでは法律で決まっていないから、最低限でも良いので過酷な所もあるのだ。


 まぁ死なせるような事があれば、奴隷商でも買い主でも一応罰せられる事には成ってるが、中々証拠が見つからないので、裁かれる人は少ないそうだ。幾ら発見された時にやせ細っていても病気のせいだと言えばそれまでの世界だからね。

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