ままならないことや、自分ではどうしようもないことは、人生でたくさんあります。
なんで自分だけ、こんな嫌なことや不幸なことばかりなんだろう、と思うことも。
禍(わざわい)を転じて福となす。
そんなことわざもありますが、まあこれは気の持ちよう。
でもそんな自分に降りかかった辛いできごとが――
そばにいる人にとっての何よりの助けとなるなら。
きっとそれは辛さを受け入れる理由になってくれるのでしょう。
この物語の主人公、星野陽葵もまた、突然のトラブルにぶつかった女の子です。
バスケットボールの大会に出られなくなる現実は、大きな不幸のはずでした。
そんな入院生活で出会った一人の少年、一之瀬朝陽。
不思議な病気でずっと入院している男の子。
彼とのささやかな心のふれあいがこの物語です。
病院。病気。孤独。
そんな暗い中にあって、どこまでも明るくまっすぐな主人公がとてもすてきです。
自分の不幸をなげくことより、相手を思いやれるところはまさにヒロイン。
(そりゃあもう、朝陽君からすれば、ひとりぼっちの病院でこんなほがらかな女の子に出会えば、好きにならないわけがないですよね)
「太陽」のように明るく優しいのが陽葵ならば、もしかすると朝陽はある意味「月」だったのかもしれません。
「夜明けが来なかった君へ」とある通り、彼は物語の前半では夜――月の側にも思えます。
日本神話の太陽の女神アマテラスと月の神ツクヨミのように。
でも空の月が太陽の光を受けて輝くように、彼もまた少しずつ朝陽のように明るくなっていきます。
「陽葵は僕のことを照らしてくれるけど、陽葵のことは誰が照らすの?」
この言葉がとても印象的です。
It's always darkest before the dawn(夜明け前が一番暗い).
暗い中を二人で歩んだ先。
そこで何を見ることができたのか、ぜひお読みください。
とてもあたたかい言葉遣いで読みやすいです。
人の幸せをすなおに願うことのできる主人公の力かもしれません。
優しい言葉で書かれた物語は、きっと読んだ時にあなたの心をほっとさせてくれるでしょう。
おすすめです。