無い記録

どす恋!ケツ毛大明神

1.キャラメル怪文書

 オバケではないんです。何も分からなくて、何だったんだろうなって話なんですけど、それでも大丈夫ですか?


 小さい頃、習い事終わりのご褒美に、いつもキャラメルを買ってもらってたんです。当時は中にオマケのシールが入ってて…そう!あのキャラメルです!よかったぁ、知ってる方がいて!そうそう、綺麗な海外の景色だったり、衣装を着たモデルさんだったり…


 …で、一枚だけ、明らかに変なのが入ってたんです。セピア色の、古い証明写真でした。

いや正確には違うのかな…?ほら、戦時中くらいの時代の、学生の集合写真ってあるじゃないですか。あの中の1人だけバストアップで切り取って引き伸ばして、証明写真くらいのサイズにしてるみたいな。


 私も小さかったから、そういう種類のものかと思っちゃったんですよね。で、いつも裏面にはタイトルが書かれてて親に読んでもらってたんですけど、その時も何か書いてあったから親に聞いてみたんですよ。これなんて書いてあるの?って。


 そしたらなんとなく、親が一瞬黙った気がするんですよね。シールとその裏面見て。

こっちは早く知りたくて、なになに〜?って何度もせがんでいたら、急にこっちを見て、

「当たりだからもう一個もらえます、だって!」

って、にっかり笑ってきたんですよ。

その時はもう嬉しくて。キャラメルが、もう一個!やったー!って一緒にジャンプして喜んじゃいました。


「ちょっと待っててね」ってすぐに店まで戻っていって、当たりのキャラメルを持ってきてくれました。

さっきのオマケは?って聞いたら、「あれは引き換え券だからお店の人に渡したよ」って。


 …当時は、素直に信じちゃってましたね。

すっかり忘れたままだったんですけど、最近その事を思い出しておかしいって気づいて…。

…ですよね。あのキャラメル、オマケはあっても当たりなんて、ねえ。


 だから気になって、この間実家行って探してみたんですよ。祖父母の写真。…でも、同じものどころか似たような写真すら見当たりませんでした。だったらもう親に直接聞くしかないじゃないですか。隠してたんだろうけど、もう子供じゃないし教えて欲しいんだけど、って。

なのに、親は「覚えてない」って言うんです。私、まだはぐらかしてるのかと思って、ムッとしちゃって。習い事の話とか、いつもキャラメルのオマケを買ってくれた話とか、一度だけあった“変なオマケ”の話とか、全部覚えてるよ、バカにすんなよ、って、ついまくしたてちゃったんです。

まずい、と思ったんですけど、親はキョトンとした顔して、「それウチじゃないな、バイトの学生さんだよ」って。


親、店かまえて自営業してたんですよ。その時に雇ってた大学生か院生くらいのアルバイトの方に、私の習い事の送迎も頼んでたみたいで。

男か女かも覚えてないんです。ただ“親”だってずっと思いこんでました。

「キャラメル買ってもらった〜って、いつも嬉しそうに帰ってきてこっちも助かったのは覚えてるよ。そのバイトさんにえらく懐いてたんだよねぇ。」

って、親も懐かしんでたんですけど、店は何年も前に畳んでて、その方の連絡先ももう分からないみたいです。

だから、あれが何だったのかはもう確かめようがないっていうか…。だから、怖い話って感じではないんですけど。


その方に会いたいか、ですか?

…そうですね。いつか、会えたら会ってみたいです。

自分にとっては、瞼の中にいる親のような存在でしたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

無い記録 どす恋!ケツ毛大明神 @doskoiktg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ