大きな後悔

「そこのお嬢さん、何があったのか説明してくれるかニャ?」


鋭い目つきを私に向けながら大きな白猫は


そんなことを聞いてくる。


「私はただ...────」


「夏の王よ、そんな質問しなくても分かるじゃろ?」


「此奴が妾の千秋を傷つけたんじゃ」


私が答える前に赤の女帝は私の言葉を遮り、


真実では無いことを言う。


寒珋に助けを求めようと思い、


寒珋の顔を見る。


が、私と目が合った瞬間、目を逸らした。


ここに私の味方は居ないってこと?


なんでよ...




本当に私は──


「私はやってないのに!!」


そう叫んだと同時に辺りがあの藤の花弁で


包まれた。


そして私の目の前に紫色の龍が現れた。


だけど幻想のように薄く、


ホログラムのような透明を姿としていた。


大きな白猫と赤の女帝は目を丸くしたまま


固まっている。


しかもなぜだか寒珋は涙を零していた。


【夏の王よ、汝の力でその子を目覚めさせろ】


【我は____】


エコーがかるような声。


だけど、何を言ったのか分からない箇所も


あった。


大きな白猫はこの紫の龍が言った通りに


力を使った。


すぐさま辺りは温かさに包まれる。


優しい温かさ。


ほぼそれを感じたと同時に千秋が目を覚まし、


起き上がる。


「ん...」


「あれ?柧夜..なんで泣いて──」


「千秋!!」


千秋の言葉を遮ってまで抱きしめる。


それより赤の女帝の名前って『柧夜』って


言うんだ...




【まず、この騒動を起こしてしまい、申し訳ない】


紫の龍が頭を垂らしながらそう言うと、


「藤の龍のせいじゃないニャ!!」


とみんなして止める。


もしかしてこの龍が1番偉いとか?


だからみんなして頭を下げるなって言ってる


みたいな...


【いや、全ては我のせいである】


【我が──】


そう紫の龍が口を開けた瞬間、


「フユ...?」


と千秋が小さく呟いた。


いや、問いたのかもしれない。


その瞬間、紫の龍の身体は光に包まれた。


そして具現化された。


先程のホログラムのような姿とは全く違う姿。


ほほそれと同時に私はこんなことを思った。


**『千秋に紫の龍の力を奪われたんだ』**って。






【『フユ』それは我の名だな?】


【ありがたい】


そう言ったと同時に私は叫んだ。


「ダメ!!」


「千秋にはあげない!!」


私の周りに沢山の藤の花弁が飛び交う。


先程の柔らかな花弁とは違う刺々しい花弁。


「小娘!!止めろ!!」


そんな寒珋の声が聞こえるも、


でももう止めれそうには無かった。


そして花弁は一気に千秋と藤の龍が居る場所に飛んで行く。










ほぼ一瞬の出来事だった。


気づいた時には千秋は赤の女帝に守られていて。


藤の龍は何ともなくて。


だけどそれ以上に恐怖を感じたのは、


寒珋の倒れている姿があるということ。


「寒珋...?」


震え声で声をかけるも、返事は無い。


「寒珋ってば!!返事してよ...!!」


肩を揺らすも、目は瞑っているのみ。




嘘でしょ...


気づくと視界は歪む。


地面には点々と、


大きな水玉模様が出来上がる。


その時、赤の女帝が何かを言った気がしたが、


何も聞こえなかった。

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