響く声

目を開けると知らない部屋で寝ていた。


「起きたか」


「先程はすまなかった」


そう言いながら寒珋は私に向かって頭を下げた。


一瞬何に対しての謝罪か分からなかったが、


しばらくしてから理解する。


きっと唄を歌わせたから倒れたのだと


思ったのだろう。


実際は違うのだが。


「あの唄はどこで知ったんだ?」


俯いて何も答えないでいると、そう聞かれる。


「おばあちゃんから教わったの」


「そうか...」


「どうかしたの?」


「いや、何でもない」




あ、そういえば...


あの巻物と御札について聞いてみようかな。


「ねぇ寒珋、」


「さっきの部屋の押し入れの奥にこれがあって...」


そう言いながらポケットの中から小さな巻物と御札を取り出し、見せる。


すると腕まで引っ張っていきそうなくらいの


強い力で巻物と御札を私の手から奪い取った。


「中の文字は読めたか?」


" 読んだか " じゃなくて " 読めたか " ?


「え?うん...」


「なんて書いてあった?!」


食い気味でそう聞いてくる。


「『藍と紅の境目は藤なり』と『季を繋ぐ』って...」


「藤...」


意味深に呟いた後、


「とりあえずその巻物と御札は小娘が持ってろ」


「あと、これも」


そう言いながら巻物と御札を返した後、


寒珋は水色のブレスレットを渡してきた。


「何?これ」


「護りのブレスレット」


「なんかあったらブレスレットについてる氷を割れ」


「余と繋がる」


確かにブレスレットにはいくつもの氷のような宝石がついている。


こんな高級そうなもの本当にいいのかな...


「余は今から行くところがあるから小娘はここから絶対に出るな」


そう言い、部屋を出ていく。


ここ寒珋の部屋なのかな。


だってやけに寒いし氷が多いし。


いかにも『寒珋の部屋』って感じ。


というか絶対出るなって言われても


暇なものは暇なんだよなぁ〜...




その時、


窓の外に不思議な鳥が飛んでいるのが見えた。


真っ白な鳥は飛ぶ度に雪を降らしている。


「すご...!!」


窓にかぶりつくようにして鳥を見る。


その時、鳥は謎の歪みの中に消えていった。


「なにあれ...」


歪みがある場所はちょうど屋敷の裏にあたる


場所だった。


「行ってみようかな...」


寒珋が『絶対に出るな』って言ってたけど、


まぁいいよね。


そんなことを思いながら私は部屋を出て、


屋敷の裏へと向かった。




早速行ってみようと思いながら歪みを通る。


が、何かに拒まれるようになっていた。


「何これ...」


歪みの奥に手を伸ばしても手は透明な何かに


ぶつかるばかり。


そんな時、またあの声が頭に響いた。


【我の力を使うか?】


と。


「使う!!だから通らせて!!」


そう言いながら歪みを通る。


と先程と違って、拒まれず通ることが出来た。

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