第2話
僕たちは、少しの会話をしながら電車に揺られた。
そして、暫くして『学園駅』へと電車が停車したので下車する。
プラットフォームに降りたった僕ら。
僕は、背後にいる四条さんへと振り返る。
「ようこそ、
「えへへ、ありがとうございます」
はにかんだ笑みを浮かべる彼女。
僕の胸に小さな衝撃が生まれた…気がした。
プラットフォームには、人がまばらだ。
というよりも、ほとんどいない。
まあ、もうホームルームが始まっている時間なのだから。
「じゃあ、いこうか」
「はい」
北口から駅舎を出る。
駅舎を出て正面には、大きな門があった。
これが、学園の正門である。
小中校の学び舎が北口で、南口には大学がある。
ある意味で、この駅もまた学園の一部だ。
正門を潜ると並木道が真っ直ぐ校舎に向かって伸びている。
春には、此処は桜で満開になる。
2か月ほど前までは、その光景が見られた。
今は、もう6月。
並木道の木々は新緑一色に染まっている。
凡そ、100mの直線である。
そして、その行きつく場所は噴水広場である。
噴水広場からは、道は分岐する。
西に、初等部。
東に、中等部。
中央が、高等部である。
「わあ、綺麗な噴水ですね」
「うん、此処はお昼時には人で溢れる位だからね。
中等部は、あっちだよ」
「…?」
四条さんは、首を傾げ…そして、頬を膨らませる。
明らかに表情には、怒気が満ちている。
「酷いです。これでも、高校生です」
「え…ご、ごめん」
まさか、高校生だったとは。
小さな体躯だからてっきり中学生だと思っていた。
「はい、許してあげます。
それでは、教室まで案内してください」
教室まで?
あー、これは聞かない方がいいやつだ。
「陽太さんの事は、お婆様から聞いていたんです」
「お婆様?」
「ふふ、それはまた今度。早く行きましょう」
悪戯に笑う彼女。
僕は、翻弄されながら高等部校舎へと歩いていく。
その後、一旦職員室に寄って四条さんの転入手続きに付き合ったのは言うまでもない。
僕は、結局1限目に間に合わず…2限の途中から四条さんと授業を受けることになった。
そう、彼女は僕のクラスに転校してきたのだった。
んだけど、どうも様子がおかしい。
さっきまで天真爛漫な印象だったのが、今はとても無口な近寄るなオーラを発している。
2限と3限の休憩時間。
四条さんは、クラスメイトに質問攻めにあっていた。
が、その返事はほぼ相槌。
そっけなさすぎだ。
3限と4限の休憩時間にもクラスメイトに囲まれていたが先の時間よりは人が減っていた。
特に、男子の人数が。
女子は、積極的に話に行っている。
それでも、返事はほとんど相槌だった。
昼休み。
「陽太くん、助けて」
僕は、中庭でお弁当を広げていると四条さんにそう言われた。
どうやら、教室から付けて来たらしい。
僕は、弁当の蓋にお弁当の中身を分けてあげる。
「お弁当の事じゃ…いただきます。もぐもぐ…美味しい」
「良かったよ、これで美味しくないって言われたら僕は立ち直れなくなるから」
なぜなら、この弁当は僕が作ったものだから。
僕はまだ下拵えしか任せてもらえていない。
唯一の料理が、自分用の弁当なのだ。
爺ちゃんに認められなくては厨房にまともに立つことさえできない。
「それで?お弁当の事じゃないって。
何から助けたらいいの?」
「えっとね…私、緊張しいであんなに人に囲まれたら話ができないの」
「あー、それで相槌」
彼女が、そっけない理由が分かった。
まあ、確かにあんなに囲まれていたら無理だろうな。
でも、助けてあげたいけど…うーん、どうしたらいいんだろう。
「僕で、練習する?
僕とは、普通に話せるわけだし」
「うん、お願い」
こうして、僕と四条さんとの不思議な共有が出来上がった。
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うちの学園の氷姫は、僕の許嫁?! 天風 繋 @amkze
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