ハルくんは彼女を渇愛する

音央とお

プロローグですが青春が終わりました。

「私の青春終わった……」


友木優愛は頭を抱えて項垂れた。


偏差値そこそこ、自由な校風と人気デザイナーが作った制服はとても可愛く、入学してから1年それはそれは楽しく高校生活を満喫していた。


しかし、だ。


新しい制服に身を包んだ新入生達を2階の教室から見下ろしながら、出てくるのはため息ばかり。不思議そうに見てくるクラスメイト達は知らない。


わざわざ地元から離れた高校を選んだから、同じ中学から来た子はほぼいないから無理もない。私が怯えるアレのことを知られてしまう。


奴が、奴が来てしまう……!


こうやって1年生達を眺めているのは「手違いでも起こって入学して来ないこととかないかなー」という現実逃避の願いがあるからだ。


まあ、そんなこと起きるはずもなく。


桜が舞い散る中、1人の男がゆっくりと校舎に向かって歩いてくる。その様子はどこか優雅で、男の周りからは喧騒が消え、一挙一動を見逃さないとばかりに視線が集まっている。

無理もない。キラキラした1年生達の中でも格別にそこだけ輝いているのだから。


「え?なになに!?めちゃくちゃ格好良い子がいるー!」

「あの長い手足…」

「遠くから見てもスタイルが異次元じゃない?」

「クラスと名前知りたいー!」


外の異変に気付いたクラスの女子達がきゃあきゃあと騒ぎ始める。

その熱気に圧倒されていると、「あはは、珍しく優愛も見惚れちゃってるじゃん!」と誰かが笑った。


はあ?見惚れるとかそんな……


「ひぃ……」


こちらの会話に気付いたのだろうか?

弾かれたように噂の彼がこちらを見上げ、私と視線をぶつけるとにっこりと笑った。


「優愛せんぱーい!!」


ぶんぶんと音が鳴りそうなくらい腕を振る彼。周りの女子達が「え?知り合い?」なんて驚いている。嫌な予感がする。やめてやめてやめて……


願いは通じるはずもなく。


「また2年間一緒の学校ですね、愛してます」


周囲から悲鳴が上がる。

ああ、私の青春終わった……。

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