第18話 強襲
ルーナはこくりと頷いた。
「はい。ドラゴンの心臓は食べれば活力が漲り、まさしく不老のようにエネルギーに満ち溢れる……と言われています。可能性は大いにあるかと」
「おぉ、おぉ! 凄いではないか!」
これは、大いに期待できる。
ドラゴンの心臓に特別な力が宿っているなんていうのは創作の世界ではよく聞く話だ。確かに不老長寿になれるかもしれない。
少なくとも処女のエルフの生き血を啜るよりかは何百倍も期待できる。
「早く食べようぞ!」
「ちょっと待ってくださいね。赤龍の心臓は熱に強いので、よく焼かないと……」
ルーナは一枚一枚ドラゴンの
こう言ってはなんだが、普通に美味そうだった。
「はい、コヨリ様」
皿に盛られたドラゴンの
震える手で口に運ぶ。ゆっくりと咀嚼する。
ルーナもミズキも、その様子を神妙な面持ちで見つめていた。
コヨリはドラゴンの
「う、美味い! 美味すぎるぞ、これは!」
とんでもなく美味かった。
前世で食べた牛の
まさに旨味の爆弾だ。
何も付けなくても全く問題ないほどの旨味である。
「こんな美味い肉は初めてじゃ! ルーナ! もっと焼いてくれ! あと20枚は食えそうじゃ!」
「あ、あの……コヨリ様……」
「ん、どうしたルーナ。手が止まっておるぞ」
「お体の方に、何か変化などは……」
「……………………んん?」
言われて、コヨリは目をパチクリと
そういえば不老長寿がどうこうって話だったっけ、と旨味に汚染された脳みそで思考し、自分の体をまじまじと見下ろした。
「……………………特に変わった感じは、しない……な……」
特に変化はなかった。
確かに活力が漲っている感じはあるが、これはあれだ。精力増強的な奴であって不老長寿とは一切関係ないだろう。
「「「……………………」」」
つまりドラゴンの
「……二人も食べてみぃ。驚くほど美味いぞ……」
「……で、では失礼して……」
「……あぁ、私達もいただくとしようか……」
なんか微妙な空気が流れる中、ルーナとミズキはドラゴンの
「お、美味しい!」
「なんだこれは! こんな、こんなもの……酒が進むに決まってるじゃないか!」
パクパクと美味しそうに食べる二人に、コヨリは顔を綻ばした。
そして考える。
(やはり不老長寿の法を見つけるのは並大抵のことではないか)
そもそも原作では不老長寿についての話は一切出てこない。実在しているのかも不明だ。
こればっかりはそれらしい情報を見つけ次第試していくしかない。気の遠くなるような話だった。
(しかし悠長にもしていられん……のじゃロリでいられる時間には限りがある)
今のコヨリは10歳。コヨリ個人の感覚としては12歳くらいがギリのじゃロリの範囲。それ以降はだめだ。のじゃ少女でものじゃお姉さんでもだめなのだ。
つまりタイムリミットは後2年しかない。その上でテオやネメシス=ブルームのこともある。時間は無駄にはできない。
早急に次の一手を打つ必要がある。
「ルーナ、ミズキよ。二人はドラゴンの心臓の話をどこで聞いたのじゃ?」
「え、普通に王都の酒場で聞きましたけど……」
「ふむ、ならばまだ冒険者ギルドには行ってないんじゃな」
「はい」
冒険者ギルド。それは世界各地に点在する、いわばフリーの傭兵集団だ。彼らは魔物退治から護衛、人探し、迷宮探索など、報酬次第でどんな依頼も受ける。
世界各地を旅するようなのも多いから、あそこで聞けば有益な情報を持った者もいるかもしれない。
「よし、ならば冒険者ギルドに行くぞ。そこで不老長寿の法について知ってる者がいないか探す。手掛かりがなくとも、依頼主として情報提供者を募れば何かしらは分かるじゃろ」
「承知いたしました。ではすぐに出立を……」
「まぁ待て。先に腹ごなしが先じゃ。腹が減っては戦はできぬというじゃろ」
3人はばくばくと焼肉を食べ、十分に腹を満たしてから店を出た。
ちなみに会計に関してはドラゴンの素材を丸ごと業者に買い取ってもらったので、かなり手持ちには余裕がある。金貨数十枚といった所だが、これでもまだ前金らしい。残りは後日清算とのことだった。
店を出たコヨリ達は冒険者ギルドに向かって歩き出す。既に辺りは日が落ちて街灯が道を照らしていた。夜だというのに王都の活気は少しも衰えることなく、むしろ増しているようにも見える。
人が錯綜する大通りで、コヨリは突然、ぴたりと立ち止まった。
「コヨリ様?」
ルーナが訝しそうに声を上げる。
コヨリの視線の先、人の波からゆらりと現れたのは――
「コヨリちゃん。やっと見つけた」
テオだった。
「テオか。どうしたんじゃ、こんな所で」
「コヨリちゃんを探してたんだ。これからどこへ?」
「冒険者ギルドじゃ。ちょっと野暮用でな」
「……僕もついて行っていいかな?」
コヨリは小さくため息をついた。
(またそれか……こやつもしつこいのう)
どうせまた強くなるために、とかそういう理由だろう。
正直、これ以上テオと一緒に行動するのは得策ではない。コヨリはテオのヒロインになるつもりは更々ないのだ。不必要に行動を共にするメリットがない。
「断る。さっき手合わせしたのは我がたまたま気が向いたからじゃ。分かったらさっさと帰るんじゃな」
そう言って、コヨリはテオの横を素通りしようとする。
「だったら――」
テオは呟き、すれ違い様にコヨリに向けて剣を振った。
「――ッ!?」
眼前に迫る刃を、コヨリは尻尾で防ぐ。甲高い金属音が夜空に響いた。
「無理矢理にでも、僕に付き合ってもらうよ」
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