セックスアンドアイ
益荒男 正
囲われる女
夜になった。
女モノの着替えとタオルを抱えて廊下を歩く。
明かりとよがり声が漏れる部屋の前へ。
団長の部屋だ。
扉横の壁に寄りかかり事が終わるのを待つ。
もう慣れた。
目をつぶり耳をふさいだところで、彼女がエッチしてる事実は変わらない。
だったら気にしても仕方ない。
タオルの毛並みを揃えながら時を過ごす。
声が止んだ。
姿勢を正す。
扉がゆっくり開き、彼女が姿を現す。
長い銀髪、白濁の瞳、潤んだ唇、きめ細かい肌。
ネグリジェに透けるふくよかな胸とお尻、細いくびれ。
女性の理想をありったけ詰め込んだモノがそこにあった。
「ごめんなさい、待ったでしょ?」
「ぜ〜んぜん。早く水浴みに行きましょう」
私の最も愛するヒトは、抱かれてもなお美しい。
どこかの世界、どこかの国。
荒野と森林の狭間に隠れるように佇む傭兵団『黒蛇』のアジト。
30人ほどの男たちがむさ苦しく共同生活している。
女性は私たち2人だけ。
私はエマ。
歳は忘れたけど、10歳はとうに越えてるはず。
団員だけど戦闘員じゃない、男勝りな力はないから。
もっぱら雑用係で、掃除洗濯炊事……
誰もやりたがらないことをせこせこ頑張ってる。
男は性愛的に好きになれない。
筋骨隆々に魅力を感じない。
細くて柔らかい方がずっとエロス。
だから『付き合うなら女かな』と何となく思ってた。
で、この人はユーリさん。
こないだ団長が身請けしてきた娼婦。
初めて見たときの衝撃は忘れない。
『こ、降臨……?女神の……?』ってあまりの美しさに膝から崩れ落ちた。
そのせいで『付き合うならこの人』に変えられちゃった。
何とかお近づきになろうとしたが、
『全財産はたいて買った俺のモンだからな!指1本触れんじゃねぇぞ!』
と団長がケチくさい号令をかけ、ユーリさんを部屋に閉じ込めやがった。
それでも果敢に話しかけに行った団員が5人いた。
結果、もれなく半殺し。
哀しいかな、ユーリさんは真に高嶺の花となって誰も寄り付かなくなった。
だけど不都合もあった。
慣れない場所で誰の助けもなく自由に歩き回れない。
すぐにユーリさんは生活に困ったらしい。
ご飯は?着替えは?風呂は?部屋の片付けは?
その訴えを聞いた団長はしぶしぶ私を世話係に任命した。
このときほど女に生まれて喜んだことはない。
同性でも下心はあるんだぞ。
「エマです。言ってくれれば何でもします。よろしくお願いします」
「あら、だったら下の世話もしてくれる?」
「いいんですか?」
ご褒美でしかないが?
「フフ、『いいんですか?』だなんて。冗談よ、面白いのね」
冗談かぁ、残念。
麗人の見た目して意外とお茶目?
とかくこんな経緯で私とユーリさんの関係が結ばれた。
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