第53話 敵と花武③ 蓬々の家の璃音姫Side
飛び込んだ茶館の空いている部屋を素早く探して、誰にも見られないうちに美梨の君の衣に着替えて、顔の化粧を変えた。
手早く美梨の君に変身した。
急いで通りに戻ると、遠くから
「激奈龍の
私たちが立っている屋台の数軒隣に大きな酒楼があった。人の出入りはそれなりにある。館を見上げて、私はため息をついた。この酒楼は中の庭もそれなりに大きいだろう。
「荷車はここの中に入って行ったんだ」
「この酒楼の見取り図は頭に入っている。
私はうなずいた。
よし、姫を救い出そう。
この
私は顔の下に薄布を当てて、顔の半分を隠した。花武皇子にも布を貸してやり、顔を半分隠させた。頭巾も被って顔も半分隠している花武皇子はお忍びで名家の息子が遊びにやってきたと思われるだろう。
私たち2人はこうして酒楼に入って行き、広間の天井に隠れて待っていたのだ。すると、あの五色の装束を着た男に、
だが、驚くようなことが起きた。
花蓮が赤い竜の主だと知った敵が今度は鷹宮に法術の攻撃を仕掛けようとすると、
私は花蓮が攻撃されたと知り、心配で心配でたまらなくなった。そこにいきなり
「鷹宮さまも福仙竜の主よ。花蓮姫もそうだけれど、世継ぎの夫婦は揃って2人とも竜の主あるじなのよ」
今世最高美女は鷹宮に法術の攻撃をかけるのをやめさせようと、必死の嘘をついていた。
天井から見ていていも、将軍の赤い瞳が危険な輝き増して、
「真実よ。今世最高美女を差し置いて、選抜の儀32位の末席の姫が妃に選出されてしまった理由がそれよ。鷹宮さまと花蓮姫は福仙竜同志の
私にとって一番聞きたくない言葉だったのかもしれない。
親友と最愛の人が番だと言われて、のたうちまわりたくなるほどの、ヒリヒリするような心のざわめきを感じた。
気づくと、倒れた
秦の術か!?
誰が使っている?
「行くぞ!」
戸惑う私は、
私と
「逃げるぞ、
私が私の
だめだ、
そんな顔をして私を見るな。
私は女だぞ?
私は
「お前、鷹宮かっ!?」
「悪いねぇ、彼女は私の妻になる人だ。私の妻になる人によくも狼藉を働いてくれたね。私は許さない」
敵を欺くためにそう言っているのか?
私はチラッと花武皇子の表情を見た。
本気か?
本気だな!?
驚いて
おぉ、妖艶だ。
鷹宮より大人っぽい。
「法術が使えるなら、飛び降りれるな?
花武皇子が
花武皇子と
ありかもしれない。
いや?
どうなんだろう?
「美梨、いくぞっ!」
花武皇子が鋭く言い、私は真っ先に広間の窓に突進した。
選抜の儀第1位の今世最高美女はとんでもない力を隠し持っていたようだ。
敵は一瞬、足元が揺れたかのようによろめいて倒れかけたが、すぐに体勢を立て直して追ってきた。
「行くぞぉ!」
私が窓から飛び降りると、花武皇子と
今のは何だった!?
満開の桃の花の上に積もった雪がそれはそれは美しく見えた日、花武皇子と
私が持っていた梅香の衣装を着せ、いつの間にか貞門で合流した秦野谷国の
雪の残る都を馬でかけるのは冒険だった。あちこちのレンギョウの黄色い花の上に乗った雪が馬で駆ける私たちの体にあたり、黄色い花びらから雪が飛び散るように落ちるさまは儚く美しかった。
絹の薄い衣がはだけるのも構わずに、髪を靡かせて馬に跨ってかける今世最高美女は最高だった。
別れ際、花武皇子は彼女の頭をぽんぽんと撫でてよくやったと褒めてあげていた。
秦野谷国の狙いは何なのか分からない。
だが、私の目にはは
ふと私はそう思った。
だが、貞門を抜けたところで空を飛翔して行く赤い竜を見て、私はすぐに敵の酒楼に戻ったというわけだった。
***
今、敵のアジトになっていた酒楼で合流した花蓮、鷹宮、私の3人は、赤い煌めく竜に乗って宮廷に戻った。
天蝶節のこの日、御咲の国の先帝、現皇帝、次期皇帝を一網打尽にする暗殺計画が
私の入内は予想もつかない展開となった。
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