第28話 窮地
「だいぶ、ピンチだったみたいだねぇ」
「あぁ、オレの可愛いお友達が全部ヤラれちまった。ギリギリ、ボルソンだけ残ったか」
そう言うと、頭と短い胴体だけになった大蛇が戻ってきて、再び西園寺を頭に乗せた。
「しかし、凛に起こしてもらって助かったぜ、そうじゃないと、自覚する前にボルソンもやられてたかもしれねぇ」
「フンッ、なかなかその蛇が妖さんから離れなかったからね」
「お陰で間に合ったぜ……コイツらだ、コイツらがオレのお友達を殺ッたんだ」
「フフッ、私が手伝ってあげるわ」
東翔宮はそう言うと、右手に持った槍を私に向かって投げつけた。
「ガイーン!」すかさず理瑚が間に入り、激しい衝突音が響く。流石自称何でも防ぐ盾だ。理瑚の盾は、東翔宮の槍にも有効なようだ。
「あら、良い盾持ってるじゃない。でも、いつまで持つかしら」
盾で弾いた槍は消え、東翔宮はもう、右手に槍を持って構えている。
建物の4階ぐらい?10メートルほどの上空にいるので、飛び道具でもなければ、攻撃する事ができない。
「ちょ、お前ズルいぞ、そんな上から」理瑚が大声を出す。
「フンッ、能力の格の違いよ。あなたの能力は、その薄汚い盾なの?下民にはお似合いの能力ね」
「ガイーン!」再び投げつけた槍を盾で防ぐ。
「あなた達、邪魔なのよ。クイーンの理想世界の為に大人しく死になさい」
東翔宮は三度槍を構える。
「ちょっと待った!あんた達、夢の中でもクイーンの手下になってんの?悔しくないわけ?」
私の言葉に東翔宮が明らかに不愉快な表情を浮かべる。
「何も知らないよそ者がぁ!格が違うのよ、私にも到底及ばない差があるの。なにせ、クイーンは時を止められるのだから!誰にも敵わない高次元の存在なのよ!」
理瑚が堪らず叫ぶ。
「エッ?時を止める!?そんなのズルすぎる!規格外の能力じゃん!?」
クイーン――四天王を従えるだけあるってわけか。確かに格が違うみたいだ。
蛇の頭の上で休んでいた西園寺が話し出す。
「おい、凛!おしゃべりは、もういいだろう。オレはコイツラを早いとこぶっ殺したいんだ。なんなら、あの壊れた小屋の陰にもう1匹いるから、そいつからやってやろうじゃないか」
委員長の事だ、無防備な委員長を狙うなんて!
「や、やめろ!」私の声を聞くと、西園寺は嬉しそうに小屋の方へ向かう。蛇は頭と短い胴体だけなのに、依然素早く動き、小屋を破壊し始める。
「キャア!」
柱の影に隠れていた委員長が転倒する。東翔宮は、その真上に立ち委員長を見下す。
「委員長……いつも教室で正論を振りかざして、あなたがとても嫌いでしたわ。さようなら」
東翔宮が右手に槍を構え、狙いを定める。
「やめろー!」
私の声も虚しく、槍が放たれようとした時。
あれ?委員長の姿が段々薄くなっていく。
いや、委員長だけじゃない、東翔宮や西園寺もだ!
「舞!消えてくよ!」
理瑚の言葉で自分の手足を見る。
「エッ!私も?!アァ――」
大きな揺れの中、現実で目覚める。地震だ。現実世界で地震が起きたのだ。
地震のお陰で目が覚め、夢の世界から抜け出せたんだ。
「助かった……」胸がまだドキドキしている。地震が起きてるのに助かったというのも変だけど。
暫くして揺れは収まり、枕元のスマホを見る。
「5時15分……」
スマホでニュースを見ると、私達の地域は震度4だったようだ。これだけ揺れれば、皆んな起きてしまうだろう。
今日は月曜日、普段起きる時間より1時間以上早い。もう一眠りするか?いや、寝たら、あの場所で目覚めるってことだよな?四天王の2人も、あそこで目覚めるのだろう。もし、待ち伏せされてたら終わりだ。
そんなことを考えていたら目が冴えてしまった。
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