第3章 邂逅
第17話 1年1組
頭上にあるスマホを手に取りアラームを止める。
あー、良く寝た。今回も快眠だったみたい。でも、学校に行くと思うと憂鬱になるな。
学校に着くと、いつもの様に誰にも挨拶せず、窓際の席に着く。
「舞……」
背後から声をかけられて、ビクッとする。振り向くと、
「おはよう」
「あっ、おはよう」
このクラスで、まともに挨拶したことがないので動揺してしまった。理瑚は私の様子は気にせず小声で話しかける。
「昨日は……いや、今日かな?まぁ、どっちでもいいか、とにかくありがとう。おかげでまだ生き延びてるよ」
そうだ、理瑚と仲間になったんだ。友達と言ってもいいのかな?現実の学校で話すのは、何だか違和感がある。
「いえ、私も助かったよ」何とか、言葉をつなぐ。
「それにしても、また増えてるよ、無気力人間。もう、まともな人が数人しかいないくらいだよ」
理瑚に言われて教室を見回す。殆どの人が視点が定まらず空を見つめ、口は半開き。何とも異様な空間だ。
逆に残ってる人達――現状で残ってると言うことは、もう、強敵と考えていいかもしれない。私は気を引き締める。
「理瑚、今日1日で残りの人を全員確認しよう。誰がいるか把握するだけでも違うかもしれない」
「そうだね、絶対2人で生き残ろう」
理瑚は力強く応える。
理瑚は休み時間の度に私の席に来てくれて話をした。まぁ、漫研の連中が全滅してるのもあるんだけど。理瑚は夢の中で会った通り、図々しいけど明るくて、こちらも変に気を使わないで済む。
お昼も机を並べて一緒に食べた。意外なのは、お弁当を自分で作ってるって事。両親が共働きで、朝早いから自分で作るんだって。夕食の準備も手伝ったりして、家族思いの所もあるみたい。
昼休みには、お互いの好きな漫画やアニメの話をして笑い合った。私がこの学校で雑談するのは初めてだし、笑うのも初めてかもしれない。
そんな急に親しくなった2人の様子を、他の人達は訝しげに見ているのがわかった。特にクイーンと四天王が、鋭い視線で睨みつけているのを感じた。
放課後、図書室で確認結果をまとめる事にした。私が直ぐに帰宅せず、学校に残るのも初めてのことだ。
図書室には、他に4、5人の生徒がいるだけだ。私達は窓際の端の席に陣取り、クラス名簿を開く。
「よーし、結果報告行くよ。ちょっとノートにメモしてきたからねー」
そう言って数学のノートのお尻のページを開く。
おいおい兼用かよ。別にいいけど。
まずは、新たに無気力人間になった人を確認してみる。漫研、陸上部の連中は見てきた通りなので置いといて、他には、サッカー部の
「前に聞いた話だと、この2人はサッカー部の中では、1年生なのにスタメンのツートップで、コンビネーション抜群なんだって。一体どんな能力だったんだろうね?ちょっと見てみたい気がするけど、アタシ達の敵として会わなくて良かったかもね」
「まあね、運動神経抜群だからって、あの世界で活躍できるとは限らないけどね」
夢の世界は創造力が重要だから、体育会系より、文化系の方が有利かもしれない。
「それとね、英語研究会の
「英語で返せなかったら負けるなんて能力だったら、勝ち目ないよね」
うん、こっちは、会わないうちに退場してくれて良かったかもね。
「あと、最後に齋藤 心奈の友達の
どうやら、今回、新たにやられたのはこの4人みたいだ。
そして次は、まだしっかりしている人。つまり、夢の中で出くわす可能性がある人だ。
「まずはクイーンと四天王だね。全員健在とはねー」
理瑚が口をへの字にして、渋い顔をするので笑いそうになったが、我慢して話を続ける。
「本当だね、もしかして夢の中でもつるんでるのかな?」
「だとしたら手強いね。能力がわかってるのは?」
「空から槍を投げる東翔宮と爬虫類使いの西園寺。まぁ、西園寺は自覚がないかもしれないけど」
「うーん、クイーンと残り2人は不明かぁ」
私と理瑚が話してるのを睨んではいたけど、基本的には普段通りで余裕が感じられる。現実でクラスを支配してるのに、夢の中まで支配されてたまるかってーの。
「あと、残ってるのは――学級委員長の
「何か頭使った攻撃とかしてきたりしてね。アタシは勉強とか、からっきしだからね」
「イヤ、私もだよ。こっちは剣一本だからな〜」
頭脳戦みたいになったら太刀打ちできないかもしれない。
「それで教室での様子なんだけどさ、2人とも昨日はピリピリしてた感じで、委員長は今日も変わらずだったんだけど、沢渡さんの方は何だか落ち着いた雰囲気に見えたな」
「そうそう、アタシも思った。何か笑みさえ浮かべてたよ!」
昨日で、何か掴んだのかもしれない。これは要注意だ。
「あとね、
理瑚が頬杖をつきながら名簿を指差す。
「ん?久住 朋佳って、背の小さい大人し目な子だよね?部活動もしてなくて。何か知ってるの?」
「うん、アタシもそんな詳しくないけど、聞いた話だとオンラインゲームにハマってるらしくてさ。世界中のプレイヤーが集まった戦場で銃で撃ち合うみたいな奴?」
「あー、夢の中の世界とあまり変わらない訳か!」
「そうそう、十中八九ゲーム内みたいな銃の能力を得てると思うんだ。これはかなりの強敵だよね」
これはヤバイ、隠れて遠くから狙い撃ちされたら防ぎようが無い。こっちから先に見つけるしかないけど、身を隠すのも慣れてるんだろうな。
「そんで、残りは2人――可愛い系の
「教室でも、特に周りを警戒とかしてなさそうだし、何考えてるかわからないね……」
以上が生き残りの全員だ。私と理瑚を含めて12人。私達のクラス1年1組が全部で43名だから、この4日間程で既に4分の3ぐらいが犠牲になっている。
「クラスの残りは、これだけなんだけど、舞は男の人にも会ったんだっけ?」
「あー、そうそう、ホークとか名乗ってる人ね。そういう人も他にもいるかもね、まだ見たこと無いけど」
「う〜ん、その人は敵意は無いんだっけ?今度会ったら、夢の世界の事もっと詳しく聞いてみようよ」
「そうだね、長い事住んてるとか言ってたからね」
私達は暫くの間、夢の世界での対策を話し合ったが、特に妙案は思いつかず、取り敢えず怪しい塔が立っている学校には近づかないでおこうと決めた。そして夢の中では一緒に行動しようとだけ約束して帰路についた。
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