「転生したけど、スローライフが退屈すぎる!」そんな贅沢な悩みを抱える元TRPGおじさん(現・名前のない水の精霊)が、目の前で繰り広げられる甘酸っぱい貴族カップルの痴話喧嘩にブチギレ(?)したことから始まる、異色のファンタジーコメディ。
イソップ童話の「金の斧、銀の斧」をベースに、前世のGM(ゲームマスター)の血が騒ぎ出した主人公が、無茶苦茶なセッションを仕掛けていくテンポの良さがとにかく最高です。
1. 「マイケル・ミヒャエル・ミッキー・ミッフィー」名前のバリエーションで殴る神がかったGMロール
ヒロインのマリッサに突き落とされた黒髪少年・ミカエルを救出(キープ)し、水の魔法で生み出したのは「金髪のマイケル」と「銀髪のミヒャエル」。
すべて「Michael」の言語違いというGMの悪ノリ全開の仕掛けに、戸惑いながらも巻き込まれていくカップルの構図が爆笑を誘います。しまいには全員まとめて「ミッキー」呼ばわり、銀髪には「ミッフィー」、金髪には「マイコー」と愛称を付け、アドリブでキャラを立たせるNPC(しもべ)たちの有能っぷりにもニヤリとさせられます。
2. 理不尽なダイス強制!ファンブルとクリティカルが織りなす「茶番劇」のカタルシス
「その行動をするなら、ダイスを振ってもらおうか」と、現実世界の6面ダイスを2個(2d6)引っ張り出す精霊。
GMにダイスを投げつける暴挙に出たミカエルがきっちり「1・1(ピンゾロ)」のファンブルを叩き出し、対するマリッサが「6ゾロ」のクリティカルで「私はミカエルが好きなのおおおお!」と愛を叫ぶ。TRPGプレイヤーなら誰もがニヤつく「ダイスの神様の悪戯」を、ファンタジーの告白イベントに見事に融合させた演出はお見事の一言です!
総評
最初はカップルへの嫉妬から始まったおじさんの悪ノリが、気付けばその血統を何世代も見守る「優しき守護精霊の物語」へと着地する。
爆笑必至のTRPGあるあるネタを散りばめながら、読後感は驚くほど爽やかで温かい。短い中にエンタメのすべてが凝縮された、TRPG好きにも、ほっこり系ファンタジー好きにも全力でオススメしたい傑作ショートストーリーです!