異世界の少女に呼ばれて探しもの

仁志隆生

第1話「もう二度と会えないと思っていた」

「隼人さん、力を貸してけろ!」

 目の前にいるのは背は低めで金髪を三つ編みにしていて、蒼い目がぱっちりで頬にはそばかすがある、昔のセーラー服っぽい服を着ている女の子。


 ある日突然俺の前に現れて、なんだかんだとあって一緒にあちこち旅して、一緒に暮らした……俺の大切な人。


「……キクコちゃん」

「なんだべ? きゃあっ!?」


「キクコちゃん……」

 本物なんだ、夢じゃないんだ……。


 ああ、もう二度会えないと思っていたのに。


 ああ、もう離したくな、


「は、隼人さん、今はちょっと恥ずかしいべさ」

「え?」


「んんっ、儂もおるんでちょいと遠慮してくれるか?」

 よく見ると長くて白い髪に皺の多い顔に長い顎髭で、いかにも大魔法使いって感じの服装と杖を持ったお爺さんがいた。

 

「あ、す、すみません……あの、俺は諸星隼人もろぼしはやとといいますが、もしかして?」

 俺はキクコちゃんを離してお爺さんに尋ねた。


「ああ、儂の名はボルス。キクコの師匠で人は世界一の魔法使いと呼んでくれるが、もう陛下を始めとした幾人かの弟子に抜かれておるわ」

 お爺さんいやボルス様が髭に手をやりながら言った。


「そげな事ないべ。皆まだ全然敵わないってぼやいてたべさ」

 キクコちゃんが苦笑いして言う。


「そう言ってくれると嬉しいのう。それより隼人殿、ここではなんだから落ち着ける場所へ案内しよう」

 俺とキクコちゃんはボルス様の後に着いて行った。




 よく見ればここは森の中に建っている古びた遺跡。

 さっきまで俺が立っていた場所には大きな魔法陣が描かれていた。


「ここ、もしかして話にあった聖地?」

「そうだべ。ひいじっちゃもここに着いたんだべさ」

「そうだったんだね……」


 与吾郎おじいさん、ここだけ見て違う世界だってよく分かったよな。

 もし俺だったら戦地の遺跡かなって思っていただろな。


「前に言いそびれたけんど、近くに竜がいたんで最初はおとぎ話の世界に迷い込んだのかと思ったみてえだべ」

 キクコちゃんが察したのかそう言ってきた。

「……よく無事だったね」


「竜はこちらから攻撃しなければ何もしないぞ」

 ボルス様が振り向いて言った。

「あ、そうなんですね。人を食べたりするのかと」

「おや、そちらではそんなイメージなのか? ヨゴロウ殿の話では『人間の子供を背に乗せて子守唄を歌いながら空を飛ぶ話もあるぞ』と言っていたが」

「それ、あたすも聞いた事あるべさ。なんか男と女の神様が語っていた昔話とも言われてるって」


 ……それって俺が生まれる前だけど、与吾郎おじいさんから見れば未来のアニメっぽいんだが。

 おじいさん、もしかして未来が見える力でも持っていたのか?

 だとしたら素でチートなのもそれでか?



 そう思っているうちに目的地に着いた。

 そこは木造の少し大きめの小屋だった。

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