今作はメル友ですが、
SNS空間でも、肉体よりも、心の姿が浮き彫りになる体験を私たちは日常しています
その中で、実生活よりもなお共鳴し合う心を見つけてしまった時、出会うべきか、それとも留まるべきかに苦心するのではないかと思います
結び合った心がその姿を見た途端、気持ちが変わってしまうのでしょうか
生まれた時間が違ったらダメなのでしょうか。距離は。姿は。性別は。
ボーダーレススノーというタイトル。
雪はいかなる国境も埋め尽くし、その線が幻であると教えてくれます
姿を越えて、心のままでありたいと願う、どこまでも続く白の世界
同じ雪を見ている、同じ夢を見ている、同じ理想を見ている
それが「現実のどんな境界線も跨いでしまえるんだ」って力となるなら、
好きという感情は雪と同じなのだろうと思いました
こうしてレビューを書く私が本当はどんな人間なのか、きっとあなたは知らない。
カクヨムでは幾つか作品を発表しているし、エッセイから或る程度の年齢や性別はわかるかも知れない。
そして、この文章を通じて私という人間の片鱗を知るのだろう。
本作のキャッチコピーは「文章だけで好きになるって、おかしいですか。」
主人公は大晦日に夜勤をしていて、そんな彼女にメル友のナナセさんがメールを送ってくる。
互いに年齢も性別も知らないふたりが、それぞれに繰り広げる告白タイム。
その先に迎える結末は、あなたの心を必ず温めてくれるはずだ。
本作の作者である諏訪野 滋さん、私はこの方のことを投稿されている小説を通じてしか知らない。
作品の端々から、この方の職業や年代を推し量ることはできるけれど。
しかし、それよりもなによりも大切なことは、この方が書かれる文章・作品が好きであるということ、それだけである。
――ということで、是非ご一読ください。