第8話「日常」

仕事をしていたら勝手に時間は過ぎていった。何かを考える間もなくて、毎日が同じような繰り返しをしているだけで太陽が昇って降りていくのを遠くから眺めているような感覚だ。

何も変わらない日々、何か足りないような気がする。

そう思うたびに、その考えを振り払う。いいから動けと言い聞かせる。

特に趣味もない私にとっては、人付き合いが趣味みたいなもので、人との繋がりがないととても薄い生活が待っている。かといって退屈だとか不幸な人生だとは思っていない。

毎日仕事をして、普通の生活を送っていくなかで、誰かと話したり、自分の好きなものを食べたり、買ったりしていれば楽しいと思える。

ふと、あの人のことを考えたりして、涙が出そうになるたびに、私はそんな健気な女じゃないと言って他のことに目を向ける。

脳死でテレビを見ながらご飯を食べて、湯船に浸かってゆっくりするだけで幸せだと感じる。

何とかそんな日々を送りながら、こんな淡白な時間でも記憶や自分自身が薄れて行ったり移ろいでいったりするのかと思う。

いつかはあなたの知らないわたしになって私自身も気づかぬうちに私の知らない誰かになるのだろうか。

そんなことをうっすら考えながら、眠りの沼の中に沈んでいった。

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