三級ポイントの故障
翌朝には簡易プラットホームを後にして、
「列車長、次の停車位置へ向かえ」
次々と完工チェックをこなし、いよいよ終端の一つ前の37番三級ポイントに……
列車長が、
「モニターの人工知能が応答いたしません、いかがいたしますか?」
「外観に異常はないか?」
「破損などの異常は認められません」
「接舷は可能か?」
「こちらより強制的に接舷可能、通路も確保できますが危険があります」
「強行接舷ののち、内部のメンテナンス回路に接続は可能か?」
「戦闘破損時の回収修復後のために、別系統の非常メンテナンス回路が存在しますが、ティアマト軽便鉄道線保安司令の確認が必要です」
「完工検査の担当者ではだめなのか?」
「現在のところ不可となっています」
「ではティアマト軽便鉄道線保安司令部に連絡を頼む」
「こちらティアマト軽便鉄道線保安司令部のホルト1、ロウヒ司令です」
「ロウヒです、何があったのですか?」
「終着の標準プラットホームの手前、三級ポイントモニター人工知能が反応いたしません」
「現在強行接舷中、非常メンテナンス回路につなぎ内部をチェックしたいのですが、ティアマト軽便鉄道線保安司令の確認が必要とのことです」
「わかりましたが、乗り込むのは不可とします、危険を冒してはいけません」
「了解いたしました」
しばらくしてホルト1から、
「ロウヒ指令の命令により確認コードを転送いたしました」
「列車長、ホルト1からの確認コードでモニターの非常メンテナンス回路に接続、内部をチェックせよ」
「機械的には異常はありません」
「機械的にとは?」
「モニターの全システム並びに内部破損などは認められないのですが、一部に空間の『ゆらぎ』があります、その場所がモニターの人工知能のあたりです」
「モニターの人工知能は動いているのだな?」
「動いておりますが当方を認識していないようです」
「当方を認識していない?」
「正確に言うなら、別の『当方』を認識しているようです」
「……つまり、当方とそっくりの物を確認しており、そのまがい物からの命令を待っている、ということなのか?」
「そうなります」
「どういうことなのか……困った……直接ガブリエル様にどうすればいいか、お聞きしたほうがよいか……」
結局、雪梅さんはオルゴール通信をガブリエルさんにかけたのです。
「なんと……後で返事をするので待っていてくれ……」
一時間後、雪梅さんのオルゴールにネットワークの最高頭脳というべき愛人のマレーネさんから通信がありました。
「雪梅さん?マレーネです、ガブリエルさんから事情を聴きました」
「この現象は近くに極めて微小なブラックホールが存在し、その空間のゆがみが雪梅さんの通信を遅延させていると考えられます」
「きわめて珍しく、ひょっとすると『クエクト』――10マイナス30倍――クラスの物かもしれない」
「とにかく原因の微小ブラックホールはこちらで回収、当方のマイクロブラックホールに合体させました」
「非常メンテナンス回路への接続を解除、モニターの人工知能に命令してください」
「該当モニターの人工知能は雪梅さんからの命令を待っていると思われます」
「37番三級ポイントモニターの人工知能、私は『格子 雪梅』、確認せよ」
「確認いたしました」
この後は問題なく、37番三級ポイントモニターの完工チェックは終わったのです。
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