第5話 失われた記憶
現実の世界に戻ってきたハルカとレイは、荒れ果てた施設の一室で肩で息をしていた。二人の顔には疲労の色が濃く出ているが、その目は不安と決意で燃えていた。
「さっきの光の存在、一体何者だったんだろう?」
ハルカが問いかけると、レイは腕を組んで考え込んだ。
「分からない。ただ、オーロラに侵入した人間を排除しようとするプログラムかもしれない。」
「プログラム?でも、まるで生きているみたいだった。」
「その可能性も否定はできない。だが、重要なのは、あいつが言ったことだ。この世界がまだ完成していないっていう事実。」
レイの声には警戒心が含まれていた。ハルカは唇を噛みながら、自分たちが今直面している状況の重大さを噛みしめていた。
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施設から出るため、二人は廃墟のような通路を慎重に進んだ。崩れた天井や散乱した機器を避けながら進む中、ハルカの足が何かに引っかかり、倒れそうになる。
「大丈夫か?」
レイがすぐに手を差し伸べ、ハルカを支えた。彼女は軽く頷いてから、足元を見つめた。
「これ、何かのデータドライブみたい。」
ハルカが拾い上げたのは、薄い板状の電子デバイスだった。表面には傷がついているが、まだ使用可能のように見える。
「どこかで解析できるかもしれないな。」
レイがデバイスを受け取り、ポケットにしまい込んだ。二人は再び歩き始めたが、どこか胸騒ぎを覚える空気が漂っていた。
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外に出ると、冷たい風が二人を包み込んだ。夜空には星が瞬き、遠くで風に揺れる木々の音が聞こえる。
「ここからどうする?」
ハルカが尋ねると、レイは一瞬空を見上げて考え込んだ。
「このデバイスを解析できる場所を探す必要がある。だが、あの施設の防御システムが稼働している以上、近づくのは危険だ。」
「それなら、安全な場所を探しましょう。少し休憩も必要だし。」
ハルカの提案にレイは頷き、近くの廃屋に目を向けた。二人は慎重にその建物に入り、崩れた家具や埃を払いながら一時的な拠点を整えた。
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火をおこし、暖をとりながら、二人は静かに座っていた。レイが拾ったデバイスを端末につなぎ、解析を試みる。
「うまくいくといいけど…」
ハルカが呟くと、レイは頷きながら作業を続けた。数分後、端末の画面に文字が浮かび上がった。
「成功した。これは… 施設の設計データか?」
レイが目を細めながら画面を覗き込む。そこには、施設の全体図といくつかの機密情報が記録されていた。その中に一つ、目を引くファイルがあった。
「これを見ろ。」
レイが指差したのは、「オーロラ計画:被験者記録」というタイトルのフォルダだった。ハルカは息を飲んだ。
「被験者記録?私たちに関係があるの?」
「多分な。この計画がどのように進められたかを知る手がかりになるかもしれない。」
レイがフォルダを開くと、いくつかの名前とデータがリストアップされていた。その中に「ハルカ」という名前が含まれているのを見つけ、二人は驚愕した。
「私の名前がある…?」
ハルカの声が震える。彼女は画面を凝視し、自分の記録を確認する。
「ここに、私の記憶が操作された痕跡がある。」
「どういうことだ?」
レイが尋ねると、ハルカは手を口元に当て、涙をこらえながら続けた。
「私が何者なのか、本当の自分を知りたい。だけど、このデータを見る限り、私は計画の一部にされていた。」
レイはハルカの肩に手を置き、優しく言った。
「きっと答えは見つかる。だが、焦る必要はない。」
ハルカは涙を拭い、頷いた。
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その夜、ハルカは火のそばで眠りにつこうとしたが、不安が頭から離れなかった。夢の中で彼女は、かつて見たことのない風景と、人々の笑顔が浮かび上がる。
しかし、その夢は突然、鋭い痛みと共に途切れた。目を覚ますと、彼女の心臓は激しく鼓動していた。
「どうした?」
レイが心配そうに近づく。
「夢を見た。だけど、それが何なのか分からない。」
「夢も、記憶の一部かもしれない。」
レイの言葉に、ハルカは少しだけ希望を見いだした。
「私の記憶… 取り戻せると思う?」
「ああ。一緒に探そう。」
その言葉に、ハルカは微笑んだ。そして、再び眠りにつく決意をした。彼女たちの旅はまだ終わっていない。
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